MetaMoJi Noteや MetaMoJi Shareという手書きノート・共有アプリケーションで知られる MetaMoJiは、手書き認識入力システムである mazecも提供するなど、手書きによる可能性を広げようとしていることが伺われる。教育現場での様々な取り組みも見られ、同社がどのように教育を支援しようとしているのか、また、子どもたちに何を提供しようとしているのか、代表取締役社長、浮川和宣さんにお聞きした。(インタビュアー:CIEC会誌編集長 中村泰之)

※ Special第3回は、CIEC会誌『コンピュータ&エデュケーション』(Vol.38)の巻頭INTERVIEW(pp.3-9)を、3号(上・中・下)に分けてお送りします。今回はその「中」です。


前回にあたる第3回#1の記事はこちら。


遠隔地からの個別指導も可能に



浮川

私たちは万人に優しいソフトを作ろうと思っています。したい仕事はソフトを使うことよりも当然先にありますから、あくまでも私たちのソフトはツールであるというような立場をしっかりわきまえているつもりなんです。その代わりツールとして、頑張っていろいろな新しい機能はつけようと考えてきました。こんなものまで誰が使うんですかと言われるんですが、あるとないとでは、存在するかしないかくらいの違いなわけです。ただし、複雑になり過ぎない、使いやすい高度な機能というふうに心がけています。



中村

一見矛盾しているようだけれども、可能なのですね。



浮川

最初に IDとパスワードでログインしていただいて、端末ごとに誰が書いたかということを管理していくのです。また、 QRコードを使ってログインすることも可能です。さて、私が書いたものがみなさんに伝達されていますが、例えば問題演習をする時などは、各生徒に個別に書くというようにしてもらうこともできます。また、生徒が問題演習をしているとき、誰が今、どういう操作をしているかというのが、教師のほうでモニタリングできるようになっています。右上に赤いボタンと青いボタンがありますが、わからない生徒が赤いボタン、つまり質問ボタンをタップすると、教師の方にアラームが表示され、生徒が教師を呼び出していることになるんですね。なので、わからないところがあれば、こちらがその生徒の画面にアドバイスを書き込むことができます。当然、遠隔地からもできます。また、先生端末というのは特定の一台ではなくて、ログイン IDによって切り替えられますので、この二台どちらも先生端末みたいな形にしています。



中村

先生端末が複数あるんですね。



浮川

ええ、何名でも構いません。



浮川

ですから、例えば五年生が二人しかいないような離島など遠隔地の学校と、例えば東京の学校と提携して、一週間に一回は一緒に授業すればいいんですよ。ITはインターネットで時間と空間をぽーんと飛び越えることができたんですから、もっともっと新しいやり方がいっぱいあります。今、一人徳島から参加していますから、ちょっと彼になにかやってもらいましょう。



今西

(今西信幸:株式会社MetaMoJi事業企画部 マネージャー) 徳島から、参加させてもらっています。(徳島で説明しながら、書く)



浮川

このスピードでお互いに書くことができるんですよ。これはアメリカでもロンドンでもどこでも可能です。インターネットさえつながっていればこのスピードで出来ます。例えば、子どもが病気で入院すると、授業に遅れるとよく言われますけども、やりようによれば例えば一か月間、その子どもが毎日授業に参加することがほぼできるんじゃないかと思うんですね。



中村

教師画面で生徒の一覧画面が見られるというのも、それは ClassRoom版だけ。



浮川

そうです。



早瀬

それから、班分けの機能もあります。



浮川

これが素晴らしい。私も大好きなんです。



早瀬

ある特定の複数のユーザをグループで協働学習をさせるということができます。実は今端末が複数ありますけども、これらを一班と二班に二つに強制的に分けていますが、今ヒマワリの絵が出ている人と、カマキリの絵がでている人とがいるはずです。



浮川

私はカマキリだ。徳島は何?



今西

私もカマキリが出ています。


写真右から浮川和宣(株式会社MetaMoJi代表取締役社長)、早瀬雅之(同社営業部ディレクター)、中村泰之(CIEC会誌編集長)



早瀬

こちらの制御を解放しますので、自由に何かを描いて下さい。



今西

カマキリの絵に書き込みました。



早瀬

教師の方では各グループの作業がモニタリングできるようになっています。



浮川

離れていても共同で、このページを作ることができるんです。ほかのグループはまたそのグループの人たちだけの間で、こう描くと各画面に現れるんです。それぞれのグループがどうなっているのかというのは、先生には全部このようにグループとして見えているんです。私たちのグループに先生が入ってくると、コメントを書き込んでくれます。



中村

グループ内ではほかの生徒が描いたものを、私が消してしまうこともできるのですね。



浮川

コンピュータがやってはならないと思っていることは、余計なことを勝手にやることです。Aさんが描いたのを Bさんは消せないというふうにすると、どうして?ということになります。共同でやるならば、Aさんが描いたものを Bさんが消してもいいだろうと。それはどう考えるかですよね。コンピュータが自動的にそんなことをダメにしたらいいじゃないかとかいうことを、エンジニアとも議論するのですが、そこは先生や生徒たちの運用に任すべきだと、その議論はものすごくします。



早瀬

グループ学習では、双方で描けたり消したりできます。ただ、先生のレイヤーと生徒のレイヤーというのは実は分けています。だから、先生が描いて説明するものを、生徒が消すということは禁止しています。



浮川

そうそう、それはおかしいですから。そこは自由ではないと。



早瀬

グループのなかではいたずら書きが相互にでき、その下側に先生がいるという形になっています。先生が作った教材を使って授業を行う場合、先生が説明するレイヤーと教材のレイヤーも違います。授業中に説明して誤って作ったデータを壊してしまうという問題があるので、背景レイヤーに教材を付けて、授業中のレイヤーに生徒が描くというような構造になっています。



中村

確かに生徒同士だと、本当に顔を突き合わせてやっている場面であれば、「お前違うぞ」と言って消すということをやったりしますが、それを遠隔地でも同じようなことを実現するということですね。



早瀬

そこで、皆さんちょっと夢中になってきたら…… (生徒端末の画面が「先生に注目!」という画面に切り替わる)



浮川

これは大人気の機能なんです。通常の授業でも、子どもたちがそれぞれ勝手に作業をしていたりしますが、突然先生が「おーい、ちょっと」とみんなに声をかけることがありますよね。その瞬間がまたものすごく楽しい時間だなと。それで先ほどのように「先生に注目!」ってするとみんなが一斉に先生の方を向いて、ホワイトボード、黒板に先生が説明を書きます。集中力が違うんです。



中村

切り替えもうまくできますね。



浮川

そうそう。子どもたちと先生との対話といいますか、集中する瞬間がすごいなと思います。



早瀬

また、生徒が属しているグループごとのフォルダができて、そこにファイルを置いていただければグループでコミュニケーションを取れるような仕組みもあります。デモは以上です。



中村

ありがとうございました。


この続きは「第3回#3 人とコンピュータとの距離を近くした未来の教育を目指して(下)」をご覧ください。