2022PCカンファレンス2日目の8月12日(金)に分科会表彰式が行われ、大会実行委員長の若林靖永CIEC会長理事から各賞の受賞者に対して表彰状が読み上げられました。受賞者の皆さんの「喜びの声」を、(1)論文賞 と (2)U-18研究奨励賞 に分けてお伝えします。

最初は論文賞に輝いた皆さんの声です。論文賞は、投稿された一般・学生論文75本を対象に、全分科会座長11名と大会実行委員3名の計14名による1次選考、大会実行委員8名による2次選考という厳正な審査を経て、最優秀論文賞1本、優秀論文賞2本、学生論文賞1本が選出されました。


2022PCカンファレンス最優秀論文賞

池本健太郎(鹿児島大学)、熊澤典良(鹿児島大学)、奈良大作(鹿児島大学)、上谷俊平(鹿児島大学)
「AI を用いた学内のコンビニ店における弁当の残数を提供するシステムの開発」

授賞理由
本論文は意欲的な実践の一つであり、AIを活用して大学キャンパス内の店舗における弁当の残数を提供するシステムを開発している。身近な問題を対象として、明確な課題設定と具体的な解決方法が示された。加えて、アイディアが生まれた文脈から、アイディアの比較実装と検証、そして実証実験までの流れが丁寧にわかりやすく、専門外の人にも読みやすい論文構成となっている。身の回りの問題発見、そしてAIを活用した問題解決は、実践的な学びの事例としても参考になることが期待される。


(左から)熊澤典良さん、上谷俊平さん、池本健太郎さん、奈良大作さん

この度は2022PCカンファレンス最優秀論文賞にご選出いただき、誠にありがとうございました。このような賞に選出していただいたことを大変光栄に思います。ご指導いただいた先生、共著者および研究に携わってくれた方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。
私は大学院進学後からAIを使用した研究を始めたため、初めは知識不足で手につかないことが多くありました。しかし先生、先輩方の協力のおかげで徐々に知識を身につけ多くの経験を重ねることで成長し、成果を上げることができました。 AIの知識だけでなく問題を解決する能力、人に説明する能力など様々な点で成長することができ、その結果が今回の賞に繋がったのだと感じております。
論文では、大学内のコンビニ店に陳列される弁当の残数をAIによって導出し、利用者に提供するシステムを開発したことについて報告させていただきました。本研究で構築したシステムによりリアルタイムに現在の在庫状況を把握でき、利用者の昼食における店舗選択に寄与することができました。今後は頂いたご意見を参考にさせていただき、より利用者のためになるシステムの開発に努めてまいります。
改めまして、この度は大変貴重な経験をさせていただいたこと並びにこのような賞に選出していただいたこと、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


2022PCカンファレンス優秀論文賞

吉田智子(京都ノートルダム女子大学)、藤田昭人(プログラマー)
「チャットボットのルール記述を利用した AI とプログラミング教育の試み―初等中等教育での論理的思考力育成利用に先駆けた文系大学での実施報告―」

授賞理由
本論文では童話の読み聞かせをする音声チャットボットを用いた教材の開発と試行を行なっている。チャットボットのルールを記述して返答させるという教材は、学習者にとって興味深く、なおかつ日常生活においてはブラックボックス化されてしまうAIについて関心を持つ第一歩となる。さらに、初等教育にも展開可能性が期待できる。


(左から)吉田智子さん、藤田昭人さん

この度は、2022PCカンファレンス優秀論文賞をいただき、ありがとうございました。私は長年、自分自身もわくわくしながらコンピュータ技術の本質を体験できるような教材作りに取り組み、8年前からはそれを夏のPCカンファレンスで紹介し、温かく受け入れていただくのを励みに活動を続けてきました。 今回は、AIと人間のコラボレーションを目的として開発した「読み聞かせチャットボットのルールを記述して返答させる!」という実習が、AIの本質の理解に加えて、プログラミング学習の準備にもなるということを、論文にまとめました。

この教材の開発に協力し、体験実習を楽しんでくれた本学の学生たちと共に、この賞を受け取りたいと思います。ありがとうございました。
(吉田 智子 京都ノートルダム女子大学・教授)

京都ノートルダム女子大学の「インターネット社会論」のAIのパートのゲスト講師をするようになって数年経ちました。これまでは座学の形式で、学生の質問には丁寧に答えてきたつもりですが、シンギュラリティなどの話に触れた学生には「AIが自分の将来について不安を抱かせるイメージ」が強いようでした。そこで2021年度は、AIの仕組みそのものを学生に体験してもらう機会を用意しました。

専門的な知識に乏しい学生にも寄り添えるテーマを思案した結果、童話の読み聞かせという演出に辿り着きました。授業で学生には「人間の気持ちに寄り添うロジック」についてよく考えてもらえたと感じています。

この体験実習を2022年度以降も続けることで、教材と授業内容について更にブラッシュアップを続けたいと思います。
(藤田 昭人 プログラマー)


後藤正幸(早稲田大学)、小林学(早稲田大学)、守口剛(早稲田大学)、関庸一(群馬大学)、鈴木秀男(慶應義塾大学)、生田目崇(中央大学)、中田和秀(東京工業大学)、石垣綾(東京理科大学)、上田雅夫(横浜市立大学)、佐藤公俊(神奈川大学)、三川健太(東京都市大学)、山下遥(上智大学)、田尻裕(早稲田大学)
「反転ゼミ形式による多大学で連携するオンライン研究交流の試み― データサイエンス領域のオンラインゼミを事例として ―」

授賞理由
本論文は、多大学・多研究室間のオンライン研究交流会の試みについて報告している。昨今のコロナ禍は、オンライン教育のあり方を考える契機となっている。本研究は学校種を超えたオンライン研究交流会の実践であり、反転ゼミ形式を取り入れることで学際的な発展の可能性を秘めている。今後の実践においても大いに参考なることが期待される。


(写真左上から)1段目:後藤正幸さん、田尻裕さん、山下遥さん、鈴木秀男さん、2段目:守口剛さん、石垣綾さん、三川健太さん、上田雅夫さん、3段目:佐藤公俊さん、中田和秀さん、生田目崇さん、小林学さん、4段目:関庸一さん

この度は、優秀論文賞にご選出いただきまして、誠にありがとうございました。今回の論文では、データサイエンスを題材として、多大学の研究室が連携して実施するオンライン研究発表会の新しい取り組みについて報告をさせて頂きました。その中で、LMS(Learning Management System)を最大限に活用し、発表の録画を事前に共有して内容を理解し、コメント機能を用いて質問やコメントを相互に交わし、発表会当日は口頭でのディスカッションに多くの時間を費やすスタイルの研究発表会を設計し、2度の実施を通じて実証的な評価を行っています。

今回は、このようなLMSの機能を最大限に活用し、反転ゼミ形式のスタイルで実施した多大学連携型の研究会のアイディアを評価して頂きました。当初は、コロナ禍でも可能な学生達の学びを最大化する取り組みを考え始めたところからスタートしましたが、最終的にこのような成果として発表させて頂くことができ、著者一同、心から感謝しております。

この取り組みは、著者メンバーはもちろんのこと、各研究室から発表してくれた学生、TAとしてサポートしてくれた大学院生、事務局としてサポート頂いた早稲田大学データ科学センターの教職員の皆さまなど、関わって頂いた全ての方々のご協力があって実現されたものです。また、このような研究発表の場を頂けたのは、PCカンファレンスを運営して頂いている皆さま、CIECの皆さまのお陰であると考えております。この場を借りて、ご協力頂きました全ての皆様に深く感謝を申し上げます。

現在の大学生は、2年以上に渡ってコロナ禍の多大な影響を受け、様々に制約の多い大学生活を送っています。当然ながら、他大学・他研究室の学生達と関わる機会も減ってしまいましたが、何とかそのような学生達に新しい経験や人脈形成の場を提供したいとの想いで、このような取り組みを開始しました。これからもその初心を忘れず、さらにこのような多大学・多研究室を繋いだオンライン研究会の取組みを続けていきたいと考えています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


2022PCカンファレンス学生論文賞

奥山陽斗(三重大学)、高瀬治彦(三重大学)、北英彦(三重大学)、須曽野仁志(三重大学)、大野絵理(三重大学)
「フォニックスを学習するための Chromebook アプリケーション」

授賞理由
本論文は、フォニックス学習アプリケーションの開発と実験を通じて、改善や機能の拡張を検討している。小学校の英語教育は音声コミュニケーションからのアプローチであり、現場の学習環境を前提とした教材開発は、今後の英語教育発展に有用だと考えられる。さらに、児童からの反応を開発に活かしており、今後、児童にとってよりわかりやすいUI、UXへの発展が期待される。


(左から)須曽野仁志さん、奥山陽斗さん、北英彦さん(スクリーン)大野恵理さん

この度は、2022PCカンファレンス学生論文賞に選出していただき誠にありがとうございます。ご指導賜りました先生方、実験に協力くださった中学校の方々、査読や選考に携わったすべての方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。

今回の論文は、GIGAスクール構想の進展に伴い全国の小中学校で導入されているChromebookを対象デバイスとした、フォニックスを学習するアプリケーションの開発とその実践調査に関する内容です。児童の発音の評価や教師へのフィードバック機能など、まだまだ課題はございますが、一歩ずつ確実に進めていきたいと思っています。

最後に、今回の学会発表におきまして、温かいコメントや激励のお言葉をいただきとても貴重な体験となりました。今後とも何卒よろしくお願いいたします。ありがとうございました。


論文賞受賞者の皆さん、おめでとうございました。
PCカンファレンス論文賞の表彰は来年度も実施予定です。
たくさんの論文投稿をお待ちしております。