今回のSpecialでは、PCカンファレンス初の試みである「ラーニングスタジオ」の報告を掲載します。ラーニングスタジオは同時刻に、8つのテーマでパラレルに展開されました。ご自身が参加したスタジオはもちろん、他のラーニングスタジオについても“創造する学び”の一端をお楽しみください。

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その研修・講座は星いくつ?~大学生協PC講座を題材に~

北村士朗 (熊本大学教授システム学研究センター,CIEC副会長理事)


北村士朗 (熊本大学教授システム学研究センター,CIEC副会長理事)

全国の約100大学で開講され受講生も17,000名に至っている大学生協PC講座は、学生スタッフが講師、TA(Teaching Assistant)、GA(Group Assistant)として運営しています。

学生スタッフは学習者として大学や高校までの授業ではアクティブ・ラーニング等の新しい授業スタイルや問題解決型の授業、ワークショップを経験しているはずなのですが、立場が替わった講師やTAとしては、携わるPC講座において旧来の一斉授業スタイルでオフィスソフトの機能紹介を中心に講座を進めているケースが少なからず見受けられます。その状況に筆者は以前から疑問を抱いていました。

そこでラーニングスタジオ(4)ではそういったPC講座での一斉授業スタイルの是非を検討し、現状でよいのか?どうすればより良くなるか?といった観点から建設的に批判できるようになることを目指し、架空のPC講座(ケース)を題材にインストラクショナルデザインや成人学習のモデル・理論を用いて評価(星いくつ付くか?)しながら、長所や問題点・課題、改善案を検討し、建設的批判の立場で議論することとし、大学生協PC講座関係者(学生スタッフ・職員・理事)を中心に64名にご参加いただきました。

まずウォーミングアップとして、受講者にこれまでに受講した講座(研修・授業)で良かったもの/良くなかったものをひとつずつ思い浮かべ、なぜそう思うか理由をワークシートに書き出し、隣同士で情報交換していただいた後、この日用いる「ID第一原理(五つ星)」「成人学習理論 」「TOTEモデル」が解説されました。ここで、多くの受講者は「良かった」「良くない」には理由があり、その理由を裏付ける理論・モデルがあることに気付いたはずです。

次によく見られるPC教室のケース(講師の指示のもとステップバイステップで進む形態)を用い、ウォーミングアップで学んだモデル・理論を使った評価の練習を行いました。実際のPC教室の様子を動画などで見るのではなく、目標や進行等を記したレッスンプラン(授業案)だけからの評価でしたが、参加者はここで実際の教室を見なくてもデザインレベルでの評価が可能なこと、理論・モデルが考え・議論する材料(きっかけ)として有用なことを体験しました。

そしてこの日のメインメニューである「ある生協のPC講座」の架空ケースを題材としたワークを行いました。このケースも講師の指示のもとステップバイステップで進めていく一斉授業スタイルのものです。参加者はレッスンプランを読んだ上で、ここまでに学んだモデルや理論を用いてワークシートに評価と理由、思いついた改善アイディアを記入し、周囲の人とディスカッションし、改善アイディアを出し合いました。

ディスカッションは大変に盛り上ったものとなりました。その間の参加者の手元のワークシートを見ると、ついた星は少なく(=評価は低く)、その分、多くの改善アイディアが書き出されていました。多くの参加者に、このケースのような、そしてよく見受けられる一斉授業スタイルのPC講座の問題点や課題に気づき、改善のためのアイディアを持ち帰ってもらえたものと思います。

このラーニングスタジオを通じ、今後の大学生協PC講座が理論やモデルに則った、そして学生スタッフが学習者として体験している新しい授業スタイルを取り入れたものになっていくことへの期待が膨らみました。参加者・関係者の皆さんに心から感謝申し上げます。


2017PCCラーニングスタジオ「その研修・講座は星いくつ?~大学生協PC講座を題材に~」(北村士朗
熊本大学教授システム学研究センター,CIEC副会長理事)

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