第12回#2「2017PCCラーニングスタジオReview」(2/8)
今回のSpecialでは、PCカンファレンス初の試みである「ラーニングスタジオ」の報告を掲載します。ラーニングスタジオは同時刻に、8つのテーマでパラレルに展開されました。ご自身が参加したスタジオはもちろん、他のラーニングスタジオについても“創造する学び”の一端をお楽しみください。
鑑賞ガイドをつくる
石川初 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
本ワークショップの課題として、以下のテキストを掲げた。
このワークショップの課題は「鑑賞ガイドをつくる」です。街で私たちの周囲にありふれている,あるいは容易に見出すことができるにも関わらず,従来は愛でる対象ではなかった風景や事象,または事物を選び,それらを「鑑賞」するためのガイドを制作します。絵や写真を使い,対象物の魅力が力説された,それを手にするとそれ以降は二度と以前のようには見えず,それを楽しく「鑑賞」してしまう,そのような視線の更新を起こすガイドの制作を目指します。今回は,これまで大学の演習などで作ってきた学生の作品のなかからいくつかの優れた事例を紹介したのち,短いレクチャーを行い,その後参加者に手を動かしてもらい,鑑賞ガイドを作成,最後にそれを発表してもらいます。
デザインやものづくりなど、何らかのものに関わる創造的な発想ができるための基礎的資質は、いかに先入観を排して物事を眺めることができるか、ということである。これに気づくための体験型・創作型の教育ツールとして、鑑賞ガイドづくりは有効である。鑑賞ガイドは、単に物事を収集して羅列・分類する「図鑑」ではない。よい鑑賞ガイドは私たちを取り巻く世界のある部分を切り取って、それに意味を与え、風景として眺めることを促す「視座」をもたらす。つまり、鑑賞ガイドは現実世界に対してすぐれて批評的な表現である。
ワークショップでは、まずこれまで筆者が同様の趣旨で実施した演習や授業の事例や、それらを履修した学生の優秀作品を紹介し、その後、教室を出てキャンパスを歩きながら各自でガイドの対象物を発見するフィールドワークを行い、その後教室に再集合して、撮影した写真を印刷し、A4用紙に貼り付けてそれぞれ独自の「ガイド」を製作、お互いに発表と講評を行った。
フィールドワークの前に、以下の「手法」を紹介した。
・愚直法: 「丸いもの」などのテーマやルールを決め、時間いっぱい、ひたすらに目についた「丸いもの」の写真を撮り続け、それらをずらっと並べてみて、そこから何かを見出す。
・執拗法: 目を引いたものや関心を抱いたものを、普段とは違う高さや距離で撮影し、その写真とじっくり向き合いながら読み替えたり見立てたりして、執拗な解説を加える。
参加者はみな積極的で、みな趣旨を早々に理解していた。最後には、赤いものの写真をひたすら取り続けて並べてみて、赤いものは「危険を知らせるサイン」と「それ以外」に分けられる、という発見や、木の樹皮の接写に「ドラム缶」「渓谷」などと名付けたものなど、独創的でユーモアのある「ガイド」が並んだ。