PCカンファレス北海道2017が、10月28、29日に室蘭工業大学で開催された。 特別講演について報告する。

1)「LMSを使った足場かけを通した協同学習」ハグリー・エリック : 室蘭工業大学

足場かけにより、学生の国際交流を円滑にした、ということが要点である。その際、教師の段階的指導にLMSが大きな働きをし、学生の学習意欲と英語力向上に繋がった。また英語で文化紹介をすることで自国の文化を深く知るようになり、「他国の文化を尊重し自国の文化への理解を深める」というグローバル人材育成への足掛かりとなった。  氏は、「どの科目を学習する場合でも、いきなりハイレベルな問題から始めると混乱が生じ、学生のモチベーションも下がる。学生に達成感を味わってもらいたいならば、教材や教育方法選びが非常に重要となる。「足場かけ」を上手に利用すれば、ビギナーからハイレベルの学生までそれが可能となる。」ということを具体例を示しながら述べられた。 発表では、英語が苦手な学生を国際的なオンライン交流に参加させる際の「足場かけとしてICTの活用」について説明し、その後、3年間にわたって実施中の国際バーチャルエクスチェンジの紹介をされた。日本国内28大学(現時点で31大学)と3ヶ国の学生とが英語でオンライン交流を行い、高額な旅費も必要とせずに海外の学生とつながる。さらに、その交流活動も協同プロジェクトへの参加(協同学習)も可能とするものである。2点の効果:異文化間コミュニケーション能力育成、現実世界におけるコミュニケーションに際して必要な言語スキルを磨くチャンスを学生に与えた。 昨今国際交流は盛んであるが、Moodleを用いての教材提供、話し合いの場、各自の作品のアップロードなどが可能で、アンケート調査からも「この活動は魅力的で国内外の仲間づくりでき、これからも継続していきたい」という声があがっている。

2)「高大接続におけるICTを利用したグローバル人材育成教育」川名典人 : 札幌国際大学

近年、高大接続の必要性が強く求められているが、実施がなかなか困難でさまざまな課題が指摘されている。 札幌国際大学は平成26年に「観光教育の充実に関する高大・地域連携協定」を北海道斜里高等学校と結び、斜里高等学校と将来の地域を担う人材を育成することを目的として多彩な教育活動を行なっているが、本発表では札幌国際大学観光学科の学生と斜里高等学校との連携の成功例が紹介された。活動を行うためのツールとしてICTを利用し、そのことで継続的な学習が可能になり、ICTを通して情報の収集、共有、そして発信の仕組みを学ぶことでグローバルな思考力が身につくことも非常に重要な点である。知床の観光スポットを紹介することをトピックとして行った活動を具体例としてあげられ、過去3年間実施された観光英会話集中セミナーや大学と斜里高校の間で実施したオンライン英会話レッスン、そして外国人観光客をターゲットとしたデジタル観光案内書の作成手法を紹介された。大学からは高校へ機器iPadが提供された。学習支援サイトを開設し、学生はiPad miniを使用して交流活動を進めた。アンケート調査からは、相手に伝わる英語を用いてのプレゼンを繰り返し改良されていくので英語の力の向上の手ごたえを感じたこと、障害を感じず進めもっと学びたい、など好意的な回答があった。氏は、継続していくためには核となる同じ教諭が不可欠であることも力説された。    

報告:吉田晴世 大阪教育大学(CIEC副会長理事)

1日目は特別講演に加え、ワークショップとITプレゼンが行われた。ワークショップは「プログラミングってなんだ? -Swift Playgroundsで学ぶプログラミングはじめの一歩-」と題してCIEC外国語教育部会のメンバーでもある北海道大学の田邉鉄先生が講師を務められた。
いよいよ小学校で開始されるプログラミング教育を念頭においた企画で、一番聞いてほしかった室蘭市内の小中学校の先生の参加もあり、「とても参考になりました」とのうれしい感想をもらうことができた。
また、ITフェアに出展頂いた企業によるITプレゼンでは最新のIT教育機器の紹介があり興味深い内容の報告が行われた。
1日目の終了時には、室蘭工業大学生協の全面的なバックアップにより生協食堂を会場に懇親会を行い、北海道、北海道以外の参加者にITフェア出展企業の方も加わり、約40名の参加者による交流が繰り広げられた。
2日目は分科会が行われ、「e-Learningとデジタル教材」、「初等・中等教育の現状と課題」、「プログラミング教育」、「教育システムの開発と分析」の4つのカテゴリーわけによる、17本の発表があった。このうち、7本は北海道外からの発表であり、PCC北海道がCIEC会員に定着していることを強く感じた。分科会発表のうち、学生、大学院生を対象に「プレゼンテーションスキル賞」を毎年選出しており、今年度は「IchigoJam用ビジュアルブロックエディタを用いたプログラミング体験教室の実践」を発表した、大阪工業大学大学院情報科学研究科 鴻池泰元氏に贈られた。両日の参加者は約70名だった。

報告:森夏節 酪農学園大学(CIEC理事)