PCカンファレンス北海道2016が、10月22日(土)と23日(日)、札幌学院大学で開催された。プログラムは、分科会 10月22日(土)9:40~12:00、10月23日(日)9:40~12:00、特別講演10月22日(日)13:00~15:30、パソコンテイク(情報保障)体験16:00~17:00である。

ここでは、初日に行われた、特別講演と体験学習パソコンテイクについて報告したい。

講演1は筑波技術大学 三好茂樹 氏による『聴覚障がい学生の修学支援とICT』であった。情報保障、遠隔情報保障の事例、音声認識の利用などが主たる内容であった。情報保障とは、身体的な障がいにより情報を収集することができない者に対し、代替手段を用いて情報を提供することである。現在、日本の高等教育機関において行われている聴覚障がい学生の情報保障において、代表的なものは、手書きによるノートテイク、パソコン要約筆記、音声認識ソフトの活用などの「文字による支援方法」、「手話による支援方法」などがあげられる。氏は、インターネットを使用した情報保障についての事例を挙げられ、その後、携帯電話を活用した聴覚障がい者向け「モバイル型遠隔情報保障システム」を紹介された。システムは、構成がシンプルで、「話者の音声を即座に字幕化し障がい者へ送信するための通話機能」と、「字幕を受信・表示するための機能」の2役を同時に兼ねる1台の携帯電話、話者の音声を取得するためのマイクロホンの2つの機材のみで作動する。日本聴覚障がい学生高等教育支援ネットワーク「PEPNet-Japan」に詳細が記載されている。次に、音質を改善し、保障者側にかかる技術的な負荷を取り除くシステムT-TAC Captionの利便性についての解説がなされた。まとめの中での、遠隔情報保障によって、人材のシェア、地域格差の解消、自由度の高い受講スタイルの提供、聴覚障がい学生の積極性を引き出す効果があるというところが印象的であった。

講演2は、千歳科学技術大学の小松川浩氏による『北海道における教育の情報化の取組について』であった。 北海道では、地域の教育水準を維持するため、ICTの活用によって、各種教育資源を地域間で相互利用する取組など、広域性を有する北海道の特性に応じた教育スタイルの推進を行っている。北海道のICT整備状況と取組、ICTを活用した教育推進・自治体応援事業、ICTそのものを目的とせず手段として活用することの重要性、メタ認知を身に着けさせるためのICT活用などを解説された。事例紹介としては、英語の授業において、海外との生徒間交流のために、事前指導でアクティブラーニングとしてICTを利用し、語学力のみならず学習意欲の向上において効果があったことを述べられた。

両講演の後、約1時間程度の質疑応答が行われたが、講演内容を深めることができる有意義なものであった。 その後の体験学習パソコンテイクでは、札幌学院大学の学生による、ハンズオンによるワークショップが行われた。連動して流れてくる音声を、学生二人が「あうん」の呼吸で入力していき、それが障害学生のスマートフォンどんどん送らてくる仕組みを実体験した。瞬時である。聴覚障がい学生への支援のためのICTの役割として、貴重な役割をはたしていると言えよう。

2日間にわたる分科会では、28件の発表があり、その中には、実践に基づくもの、萌芽的研究、北海道の特性を生かした指導展開等、教育的効果ある有意義なものであり、今後の北海道支部の活動が期待できるものであった。

報告: 吉田晴世(CIEC副会長理事)