西澤達夫さん(シナノケンシ株式会社福祉・生活支援機器ビジネスユニットプロジェクトリーダー)

早くからDAISY(注)機器の開発とDAISY教材の製作支援に取り組んでこられたシナノケンシは、元々は絹糸紡績から始まり、モータ事業に軸足を置く会社である。そのシナノケンシが障がい者支援を手掛けるようになった経緯には、必然があったと感じられる。DAISYの策定から教材作成支援にかける情熱を西澤さんにお聞きした。
(インタビュアー:CIEC会誌編集長 中村泰之、CIEC会誌編集委員 武沢護)

(注)DAISY:Digital Accessible Information Systemの頭文字でアクセシブルな電子書籍の国際標準規格です。DAISY録音図書の特徴としては、
・目次から読みたい章や節、任意のページに飛ぶことができる
・MP3などの圧縮技術で一枚のCDに50時間以上も収録が可能
・マルチメディアDAISY図書は音声にテキスト、画像を同期させることができる
などがあります。


※ Special第10回は、CIEC会誌『コンピュータ&エデュケーション』(Vol.40)の巻頭INTERVIEW(pp.3-11)を、2号(上・下)に分けてお送りします。今回はその「上」です。


絹糸紡績からモータ、そして福祉支援機器へ


本日は、よろしくお願いします。


ご承知のように2016年の4月から障害者差別解消法が施行されて国立大学では障がい学生を支援するのは義務になり、ただし私立は努力義務なのですけれども、私は特別支援学生のICTの授業ももっていましたので、『コンピュータ&エデュケーション』誌で関連の特集を組むことになり、また、昨年5月の東京のビッグサイトでの教育ITソリューションEXPOや6月のNEW EDUCATION EXPOでブースを出されていたシナノケンシさんのお話を伺いたいと思って参りました。


隣に、実は資料館ということで絹糸紡績の時代の歴史的建物と資料がありまして、なぜ『ケンシ』というあたりのところを池田(シナノケンシ株式会社 グローバル事業推進本部 グローバル人事・総務グループ 人事チーム チームマネージャー)からお話させていただこうと思っております。


創業は1918年になります。あと2年で100周年を迎える会社でございます。今西澤が申し上げた『ケンシ』というのは、漢字で書きますと『絹糸』と書きまして、創業は信州信濃から信濃をとって信濃絹糸紡績株式会社という絹糸紡績から始めた会社でございます。その絹糸紡績に関する資料館がありますので、そちらで絹糸についてもう少し詳しく説明させていただきたいと思います。その後50年ほどして、モータに事業転換を図るとともに社名もカタカナのシナノケンシに改称しております。そのモータを今も続けているという状況でございますが、モータというのは色々な技術が必要でございますので、その技術を使ってモータという部品だけじゃなくて、完成品を作ろうじゃないかということで様々な製品を、モータを軸にして作ってきております。モータは様々な分野で使われておりまして、最近ですと自動車関係とか、医療関係といったところに使われております。当社の事業の大体9割がモータの事業でございます。残りの1割が学習支援で、一部こういったハイスピードカメラのような製品も作っております。もともとはモータから派生してテープデッキを作っていたのですが、カセットからCDに市場が変わるとCDを回すターンテーブルを作り始めました。その後、CDのBGM機器とか、CD-ROMドライブを作っておりました。そのようなことをしているうちに、当時の厚生省から、視覚障がい者支援の読書機を作ってみないかという話が舞い込んできまして、取り組み始めたのが、学習支援へと繋がるきっかけでございます。


今お話を伺っていると、最初モータ事業から始まって、そこからCDドライブ、次にメディアそしてソフトウェアという、自然なつながりがありますね。


そうですね、モータに注力しているというところですが、福祉支援機器としても継続してやっていく方針です。それでは資料館をご案内します。

(資料館見学)

世界初の視覚障がい者向けデジタル読書機の誕生


ではさっそく、福祉関係のお話をお願いします。


なぜ絹からモータ、そしてモータから視覚障がい者向けの読書機と変遷してきたのかを最初に紹介したいと思います。なお、この読書機の開発製品化の取り組みについては、内閣府主催による「平成24年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰」において、内閣総理大臣賞をいただくことができました。視覚障がい者向けの読書というと、私どもは点字図書がすべてだと思っていましたら、実は約9割の視覚障がい者の方たちは音声で読書をされているということを知りました。そしてこの状況は日本だけではなくて基本的に海外も同じような状況になっています。録音図書の歴史としては、実はアメリカに先例があり、LPレコードという形で、両面で1時間音声に吹き込んだものを貸し出すというサービスが始まったのが1932年だそうです。その後オープンリールの時代を経て、1970年代にはカセットテープでサービスが行われておりました。私どもが厚生省からお声がけをいただきました1993年には、音楽市場はカセットテープから一気にCDへ変わっていました。カセットテープは、容易に想像できると思うのですけれど、一種の絵巻物語なので、聞きたいところが探せないのですね。例えば学習ですと、何ページを見ましょうといったときに一生懸命テープを早送りしなくてはいけないのですが、デジタルであれば一発ですぐ飛んでいけますよね。ということで、どうして視覚障がい者のサービスだけが旧態依然としたカセットテープかという気運が高まっていた時に、この厚生省の専門官の方が、どういうわけかシナノケンシがCDを使った業務用BGMの機械をやっているというのを聞きつけたのです。BGMもCDに切り替わってきていまして、私どもが開発した業務用BGMには二つ大事なポイントがありました。一つはともかく壊れないというタフなことですね、それから二つ目は長時間を実現するということです。お店の人が一時間で最初の曲に戻ってしまうのでは飽きてしまうし、入れ替えたりするのも手間なので、ともかく長時間安定的に再生できる機械が必要でした。そこで、CD-IというフォーマットでCD一枚に8時間、モノラルですけれども、FM放送並みの音質で入れられるという技術を私どもで開発しました。オーサリング、エンコーダーシステムとともに、お納めしていたというのを専門官の方がお聞きになられたのです。


厚生省の方々は、やはり視覚障がいの問題意識を持っていたのですか?


そうなのです。そういう問題意識を持っていて,デジタル化をどこかやってくれるところはないかと。


ほとんど偶然みたいなものですね。


そうですね。何故シナノケンシにお話が来たのかは定かではなく、多分、大手の電機メーカーさんにもお話は持っていったと思うのですけれども、おそらく、これは想像でしかないのですが、やはり市場の規模とかそういったことをお考えになったのではないかなと。しかし私どもは、たとえ国内の視覚障がい者の市場が小さくても、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ諸国集めれば、10倍とか20倍に規模が大きくなりますので、最初から国際的に束ねて通用する業界標準を作って、視覚障がい者の方々に安価な形で、10万円を超えるようなものではだめなので、最初から4万円以下という目標を決めて、このプロジェクトを開始したのが1993年になります。国際図書館連盟という国際団体があるのですが、その中に盲人図書館セクション(LBS)という視覚障がい者に特化した専門図書館部会がありまして、その議長が河村宏さんという方で、現在は、DAISY規格を開発・維持している国際団体であるDAISYコンソーシアムの会長を経て、理事を務められています。この方を通じて、例えばアメリカの点字図書館の館長さんとかイギリスの点字図書館の館長さんとかそれぞれの国での有力な団体のトップの人をご紹介いただいて、マーケティングを1995年にかけて、私どもでやらせていただくことができました。


じゃあDAISYというのは、この当時からもうあったのですね。


そうですね。この当時に作ったというのが正しいですかね。それで、マーケティング活動の結果、どうやら、聞きたい場所がすぐ探せない、かさばるという不満がCDを使って音声を圧縮して入れれば、瞬時に聞きたいところにいけるし、CD一枚で長時間可能です。当時MP3とかが出始めたときなのですけど、それらの新しい圧縮方式を使えばいけるのではないかという、技術的なメドもついてきましたので、市場性はあると考えました。世界を束ねればそこそこ大きな市場になりそうだということです。そしてあとは私どもが持っているCDを回す技術とか読み取る技術とか音声を圧縮する技術を組み合わせれば、実質的には何か実現できそうだなと。


それが先ほど資料館で拝見した初代機ですか。


初代機につながります。実はこのあとすんなりと初代機にはいかなくて、コンセプトは固まったのですけど、カセットテープ機とは違いCDというデジタルの機械で、録音図書を入れたものがどんなユーザーインターフェイスを持つべきか、という先例が世の中にありませんでした。それじゃあ自分たちで作ってしまおうということで、とりあえず試作機を作って、あなた方の欲しいものはこんなものでしょうかというような形で市場に提案しました。これが初代の試作機なのですけれど、動くモックアップを作りまして、実はこれ単独では動かなくてこの下にCDドライブを付けて、将来このワンパッケージに入りますという形で、ご提案しました。ここに入っている機能は今のDAISYの再生機の中で基本的に使われている機能がほぼ、実現されています。


原型みたいなものですね。


はい、そうですね。プロトタイプをお客様に触っていただいたところ、あ、これが欲しかった、と。とてもいい手ごたえを得たというのが最初でした。そして、国際標準を作ろうという話になりまして、私どもとしては、再生機の提供等で縁の下でお手伝いをすることにしました。ちょうどそのときに、スウェーデンのラビリンテンという会社がスウェーデンの国立録音点字図書館(当時tpb、現在はMTMに改称)から委託を受けてDAISYという基本コンセプトを開発していることがわかりました。その出会いがありまして、シナノケンシはハードウェア、再生機をつくり、ラビリンテン社がオーサリングソフトをつくる、ということになりました。


当時、ちょうどWindows95が登場していましたね。


はい。大がかりな100万円、200万円というオーサリングシステムでなくても、汎用のパソコンを使ってソフトで作れるというところが見えてきた時代で、ラビリンテン社とタッグを組んでやりましょうということになったのです。そして、国際的なフィールドテストといわれていますけど、世界30ヶ国くらいにご参加いただいて、このDAISYは視覚障がい者の読書環境をこれから担っていくものとして最適であるという結果が得られました。そして、デファクトの国際標準ということで決まったのが97年です。で、それを受けましてさっきちょっと出てきました……。


初代機ですね。


はい。TK-300という名称で1998年に初代機が登場したという形になります。それで、初代機の登場の後としては、お客様の声をいろいろお聞きしながら、例えば録音ができるものが欲しいということでPTR1が生まれています。


(シナノケンシ株式会社 福祉・生活支援機器ビジネスユニット 営業課 企画・営業) やはり、紙のメモを取るのは視覚障がい者の方には難しいので、テープレコーダで録音されていました。それを検索ができるDAISYで録音したいというご要望がありました。


(左から柳澤さん、西澤さん、池田さん)

DAISYを育てた自負


あともう一つはやはりCDという物理的な自縛がありますので、ちょうど半導体メモリも非常に安価になってきましたので、登場したのがこちらの今ご覧いただいているポケット型の機種になります。で、この辺の時代の製品になってきますと、WiFiが内蔵してあります。インターネットに直接繋がって、2010年にサービスインした「サピエ図書館」というオンラインのバーチャルな図書館から、DAISYオンラインプロトコルというDAISYコンソーシアムが決めているプロトコルで図書を配信できるようにすることを2011年に始めました。これで、利用者が自分の聞きたい本を選んでダウンロードしたり、ストリーミングで再生しながら、インタラクティブに自宅で24時間いつでも聞くことができるようになりました。


これは日本の図書館ですか。


はいそうです。理想的な読書環境というものの実現に、私どもが寄与できているのではと思っています。


サピエ図書館には、どういう分野がどのぐらい収められているのでしょうか。


7万タイトル以上が利用できます。文学系など、余暇を楽しむものが多いでしょうか。あと専門書としては、鍼灸、あんま、マッサージなどの医療系などです。また、週刊誌や月刊誌の定期配信も行われています。


音声図書にするための録音は、ボランティアなどでおこなわれているのでしょうか。


そうですね。音訳のボランティアの訓練というと大げさかもしれませんけど一年くらいの養成コースがあります。


音訳っていうのですね。


はい、音声に訳すということで。音訳では感情を込めればいいというものではないので、文字を淡々と利用者の方に伝える、つまり自分たちは透明でなければいけないというお考えもあるようです。でも結構大変なのは誤読防止ですね。誤読がないように、読み始める前には人名・地名辞典とか専用の辞典でしっかりと下調べをしてから音訳をします。


同音異義語というか、同じ発音で意味の違うようなところって結構大変でしょうね。


はい。その場合も多分音訳のテクニックとして、しゃべった後に、なになにの、とか漢字の説明を加える場合もあると思います。こういうのは、文学作品はあまりそこまで要らないとしても、いわゆる学習とか専門的な知識を得るときにはそのような配慮が必要になってくることもありますね。


では、実際に音訳を聞いていただきましょう。

〜サンプルを流す〜


こんな形で、あまり感情は入れないで読まれます。


読み方や製作方法の基準があると聞いています。


スピードなどの制限もあるのでしょうね。


そうですね。ただスピードは再生機で任意に変えられまして、結構みなさん速く聞かれています。3倍速だったり。最近の傾向をお話ししますと、従来は音声DAISYといわれ、音声ファイルだけでDAISYが構成されていたのですけど、最近は早くDAISY化して欲しいとの要望に応えるため、テキストDAISYというテキストファイルのみで構成されたDAISYのニーズが高まりつつあると聞いています。テキストDAISYに音声はついていないので、利用者は保有する再生機器の音声合成機能を使って聞きます。そして、テキストファイルがあるので、もとの漢字を個別に読み上げて確認することもできます。録音というのはリアルタイムでしかできませんので、小説ですといわゆる文庫本のもので10時間くらいの録音長になります。そうすると最低10時間の録音が必要なのですが、言い間違いとか、雑音が入ってしまったとかで、現実には10時間の成果物を得るのに倍の20時間ほど録音しなくてはいけないと言われています。20時間ぶっ通しで録音はできないので、せいぜい1回あたり2時間となると、少なくとも10回ぐらいに分けて録音しなくてはいけないことになります。ボランティアの方が毎日2時間ずつ録音できるかというとそれも厳しいので、1冊仕上がるのに数ヶ月とか半年とか、校正も含めるとかかってしまいます。これが音声DAISYですけれど、テキストDAISYですともっと早く、例えば1ヶ月以内にできる可能性があると聞いております。


読み上げを音声合成で自動化してしまうということはできないのですか。


それも可能です。後でご紹介しますが、当社では製作ツール、つまりオーサリングツールを開発しております。そこには音声合成エンジンが入っていますので、肉声で録音してもいいですし、音声合成を使ってもいいですし、また両者を組み合わせたハイブリット方式もご案内をしています。


(左から中村編集長、武沢編集委員、西澤さん)


以上、何故福祉の分野をやるようになってきたのかという流れをご紹介しました。DAISYの応用が視覚障がい者向けということで当初スタートしたのですけど、2000年代に入りまして、ディスレクシアの方をはじめとする、視覚的には見えても頭脳の文字処理のところで困難を持つ方が、テキストと音声が同期して提示可能なマルチメディアDAISY方式があると非常に読みの負担が減って、理解が進むということを聞くようになりました。そこで、是非私どもの持っているDAISYの色々な技術でお役にたちたいという思いがございます。これが文部科学省の委託事業につながってきております。

この続きは「第10回#2 「読むこと」を情熱と技術で支援する(下)」をご覧ください。


CIECでは、規定に基づき、学会表彰を実施しています。


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CIEC表彰規定


* 2025年度の推薦を受け付けます。(2025年4月1日~4月30日)
» 2025年度学会表彰実施計画


表彰の種類

学会賞 功労賞

コンピュータ利用教育にかかわる研究調査、啓発普及もしくは出版文化活動において、顕著な功績があったと認められる者及び団体。
コンピュータ利用教育に関し、画期的な業績によって特に貴重な学術貢献をなしたと認められる者。

学会賞 論文賞

本会の会誌に論文を発表し、コンピュータ利用教育の発展に独創性および将来性をもって寄与したと認められる者。

CIEC学会賞受賞者

功労賞

2019年度

妹尾 堅一郎 (特定非営利活動法人 産学連携推進機構 理事長) : 学術論文、学会発表、講演等を通したコンピュータ利用教育研究、啓発普及への貢献およびCIEC会長としての学会発展への貢献

2009年度

佐伯 胖 (青山学院大学教授) : CIEC会長を3期 (6年) 務められコンピュータ利用教育の発展につくされたことへの功労

赤間 道夫 (愛媛大学教授) : CIEC会誌編集委員会委員長を本会設立以来12年務められコンピュータ利用教育の発展につくされたことへの功労

矢部 正之 (信州大学教授) : CIEC副会長を本会設立以来6期 (12年) 務められ、コンピュータ利用教育の発展に尽くされたことへの功労

2004年度

奈良 久 (東北大学名誉教授) : CIEC を設立から学術団体会員となるに至るまで成熟させたことへの功労賞

板倉 隆夫 (鹿児島大学)・熊沢 典良 (同)・吉野 孝 (和歌山大学) : CIEC TypingClub の開発・改善と普及

論文賞

2024年度

藤本 和伶 (名古屋大学大学院情報学研究科)・中村 泰之 (名古屋大学教養教育院)「数学オンラインテストのペンストロークデータの可視化と自信度の推定」 (『コンピュータ&エデュケーション』Vol.54, pp.34-41)

2023年度

平山 靖(千葉県船橋市立中野木小学校)「学級担任が 1 人 1 台端末を協働学習に生かせるようになるまでの要因―インタビュー結果を用いた M-GTA を通して―」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.52, pp.42-47)

2022年度

板垣翔大(宮城教育大学)・浅水智也(加美町立中新田中学校)・佐藤和紀(信州大学)・中川哲(東北大学大学院)・三井一希(常葉大学)・泰山裕(鳴門教育大学)・安藤明伸(宮城教育大学)・堀田龍也(東北大学大学院)「AIを活用したプログラミングを取り入れた授業が中学生のAIに対する意識に与える効果」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.51, pp.58-63)

吉田賢史(早稲田大学高等学院)・篠田有史(甲南大学)・松本茂樹(同)「中等教育の数学におけるプログラミング的思考-どのように数学的思考をプログラミングに繋げるかを考える-」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.51, pp.39-45)

2021年度

熊澤典良(鹿児島大学)・福留浩太(同)・児島諒昭(同)・奈良大作(同)・上谷俊平(同)・近藤英二(同)「IoT による実習工場における教育支援の介入タイミングの検出」 (『コンピュータ&エデュケーション』Vol. 48, pp.47-52)

2020年度

守屋 俊(東京工科大学)・柴田 千尋(同)・安藤 公彦(同)・稲葉 竹俊 (同)「協調学習における会話分析用教師データの削減を可能とする転移学習の活用」 (『コンピュータ&エデュケーション』Vol.47, pp.43-48)

2019年度

面川 怜花(東京学芸大学附属世田谷小学校)・松浦 執(東京学芸大学)「「ロボットに命はあるの?」 -人とロボットの心を考えた小学校 2 年生 道徳の授業-」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.45, pp.41-47)

2018年度

安藤 公彦(東京工科大学)・柴田 千尋(同)・稲葉 竹俊(同)「深層学習技術を用いた自動コーディングによる協調学習のプロセスの分析」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.43, pp.79-84)

2017年度

(該当なし)

2016年度

澤口 隆(東洋大学)・巽 靖昭(久留米工業大学)「バックグラウンド稼働クリッカー(bgClicker)の開発」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.38,2015.6)

2015年度

白井 詩沙香(武庫川女子大学)・福井 哲夫(同)「数式自動採点システム STACK における数式入力方法の改善」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol. 37, pp.85-90)

2014年度

(該当なし)

2013年度

(該当なし)

2012年度

佐藤 和彦(室蘭工業大学大学院)・ 倉重 健太郎(同)・岡田 吉史(同)・佐賀 聡人(同)「学生のやる気を引き出す「見える」ソフトウェア開発演習の実現と評価」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.31, p.94-p.99)

2011年度

伊藤 貴一 (慶應義塾大学大学院)・熊坂 賢次 (慶應義塾大学)・諏訪 正樹 (同)・花房 真理子 (同)「自己探求する柔らかい構造化ツール『Hipparu-McS』の実装と評価」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.29, p.80~p.85)

片平 昌幸 (秋田大学)・中村 彰 (同)「新入生のICT素養と学習効果の統計学的評価」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.29, p.86~p.91)

2010年度

(該当なし)

2009年度

廣瀬 英雄 (九州工業大学大学院)・月原 由紀 (九州工業大学)・鈴木 敬一 (日本アイ・ビー・エム株式会社)「項目反応理論による評価を加味した数学テストとe-learningシステムへの実装の試み」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.24, p.70~p.76)

2008年度

松波 紀幸 (文京区教育委員会)・大熊 雅士 (前東京都教職員研修センター)・長南 良子 (同)・福島 健介 (Roosevelt University)・牧野 豊 (八王子市立山田小学校)・島田 文江 (八王子市立元八王子東小学校)・宮本 裕之 (八王子市立七国小学校)・生田 茂(筑波大学付属学校教育局)「情報活用能力育成のためのカリキュラム開発とその検証-情報収集,判断・選択に重点をおいて-」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.22, p.70~p.75)

2007年度

水野 邦太郎 (慶應義塾大学 / 上智大学)「本と人・人と人との絆を結ぶ互恵的な読書環境の創出」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.19, p.75~p.84)

2006年度

八木 龍平 (北陸先端科学技術大学院大学)・國藤 進 (同)「効果的学習技能が埋め込まれた Web テキスト読解支援システム -読解方略 SQ3R 法の適用を促進する Web インターフェースの開発と評価-」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.18,p.90~p.98)

2005年度

(該当なし)

2004年度

妹尾 堅一郎 (慶應義塾大学)「学習コミュニティを支えるメディア環境:「社会調査」の6年間に見る学習環境の変容」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.13, p.123~p.131)<br/> 「学習コミュニティにおける「支援者」の役割:慶應SFC「社会調査方」におけるコラボレーションの実際」(『コンピュータ&エデュケーション』Vol.14, p.62~p.70)


2019年度学会賞の選考を学会表彰規定(PDF)に基づき、以下のとおり募集、実施します。

表彰の種類

学会賞 功労賞

  • コンピュータ利用教育にかかわる研究調査、啓発普及もしくは出版文化活動において、顕著な功績があったと認められる者及び団体。
  • コンピュータ利用教育に関し、画期的な業績によって特に貴重な学術貢献をなしたと認められる者。

表彰選考の方法と条件

  1. 功労賞は、所定の推薦書による公募を行い、表彰選考委員会により、表彰規定に基づき総合的に審査する。
  2. 論文賞は、前年度発行の会誌に掲載された論文を対象とし、表彰選考委員会にて審査する。
  3. 功労賞受賞候補者は本学会の会員でなくても認める。

表彰について

  1. 表彰は、表彰状を授与して行い、副賞を添えます。
  2. 表彰は、CIEC定例総会の場において行います。

応募方法

資料「受賞候補者推薦書」をダウンロードして、ご記入の上、事務局 (jim@ciec.or.jp) 宛に送信してください。

公募スケジュール

公募開始2019年4月1日(月)
公募締め切り2019年4月30日(火)
審査終了2019年5月31日(金)
表彰者の決定2019年6月16日(日)
表彰2019年8月7日(水) CIEC 定時社員総会

資料


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CIEC学会表彰規定


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受賞候補者推薦書


今回のSpecialは、2017年1月に「CIEC MERLOT ハンズオン・ワークショップ 第1回」が開催されたのを機に、「MERLOT プロジェクト」を推進されている武沢 護理事へのインタビューを掲載する。 CIECはすでに2015年と2016年のPCCでシンポジウムのテーマにMERLOTを取り上げており、またMERLOTのインターナショナル・パートナーともなっている。このパートナーシップに伴いCIECはMERLOTとの連携のために「MERLOTプロジェクト」を設置し、 メンバーの拡大と教材開発による貢献促進を目指している。


CIECが連携するこのMERLOTは、教材をデジタル化するだけでなく、無料の教材としてインターネットでアクセスできるようにすることにより、世界中の様々な立場・年齢層の人々に対してデジタル機器を介した学習・教育の機会への道を開くものである。

武沢 護:早稲田大学大学院・高等学院、CIEC 理事
(聴き手:CIEC 広報・ウェブ委員会)


MERLOT(メルロー)に関しては、2015年のPCC@富山大学と2016年のPCC@大阪大学のシンポジウムで取り上げられましたので、その名前は広く認知されつつあると思います。まず、MERLOTの紹介からお願いします。


MERLOTとはMultimedia Educational Resource for Learning and Online Teachingの略で、アメリカ・カリフォルニア州立大学(CSU)を中心とした高等教育における学習・教育の質向上のためのオンライン教材の集約・開発を目的とした国際協力団体です。蓄積されているコンテンツは教員が自ら作成した講義録だけでなく、授業ビデオ教材、シミュレーション教材など多岐にわたっています。専門分野別にカテゴライズされているのでGoogle検索するよりも効率的に検索できます。


そのMERLOTとCIECは提携といいますか、協力関係を結びましたね。これはどういった関係ですか。


インターナショナル・パートナーという位置づけで覚え書きを結びました。少し堅苦しい言い方をすると、共通の使命として、教育プログラムに容易に組み込むことができるオープンオンライン学習教材の量と質の拡大・向上によって教育・学習の効率を強化することです。


インターナショナル・パートナー、国際的な互恵関係ですか。オンライン教材を開発してそれを共に蓄積して行こうというわけですね。そうした目的を果たすためにCIECは新たにどのような活動を展開しようとしているのでしょうか。


CSUとしてCIEC側への要望は、現在全世界で日本語を学習している人々へのために、「日本語学習用コンテンツ」だけでなく「日本語によるコンテンツ」が求められていて、MERLOT 内にそのコンテンツを充実させたいということです。それは大学教育対象のみならずK-12(注)対象も含めてであり、CIECとの協力体制を確立させることで、より充実したOER(Open Educational Resources)の実現を考えているようです。

(注) K-12 (K-through-twelve):「幼稚園(Kindergarten)から高校3年まで」の意。


その目的で今回の「CIEC MERLOT ハンズオン・ワークショップ第1回」を開催されたわけですね。当日(2017.01.4-5)の様子はいかがだったでしょうか


新年早々にもかかわらず20名弱の参加者があり、非常に有意義な2日間でした。 初日は、まずオープンエデュケーションやMERLOTの説明をしました。そして参加者のみなさんにMERLOTを実際に体験していただき、個人登録まで実施しました。 2日目は、MERLOTにあるコンテンツ作成コーナーを使い、教材コンテンツの作成するためのワークショップを行いました。「意外に作成が簡単だ」という感想をみなさんからいただきました。


参加された方の中には、大学で実際に日本語教材作成に携わっている方が複数参加され、このMERLOTの今後の可能性についていろいろ議論することができました。
さらに、参加者とともにMERLOTにおける操作や問題点とりわけ日本語環境についての改善なども共有しました。これらの内容は後日、CSU に連絡しました。


今後も、このようなワークショップの開催を企画します。具体的にはこの8月に東京と大阪で実施する予定で準備しています。興味をお持ちの方は是非、参加して下さい。


以前、MacintoshにはHyperCardというハイパーテキストを扱うソフトがあって、いろいろな分野の教材が作られていました。今になって調べてみると、初代のMacintoshが1984年に登場して、HyperCardは1987年ですから、WWWやHTMLが登場する90年代より前に生まれた、ダウンロードという概念もない頃の教材開発環境でした。 HyperCard は今はもうありませんがそれにとって代わるものが次々と出てきていますから、自分のコンピュータで教材を作ってそれを世界中で共有するという文化は今年で約30年続いていることになります。 その最先端でかつ組織的な取り組みがMERLOTということになろうかと思いますが、これから教材を自分でも作ろうという場合には、開発環境を手元のコンピュータではどう整えればいいのですか。


HyperCardとは懐かしいですね。私も20数年前に自前で買ったパソコンはMacⅡsiでした。これには無料でHyperCardがバンドルされていて、教材は作りませんでしたがHyperCardで作られたゲームで遊びました。 話を戻しますが、先ほど言いましたように、MERLOTにはデジタルコンテンツを簡単に作成することができる環境が用意されています。これは便利です。もし、各自が自前のサーバー内にデジタルコンテンツが作成してあるならば、MERLOT内にURLのリンクを貼るだけです。



そうでない場合は、MERLOT内に「Create Material with Content Builder」というメニューがあり、いくつか用意されたひな形を使ってデジタルコンテンツをつくることが出来ます。 一番簡単なコンテンツは、授業資料をPDF化すればそれでOKです。 また、言い忘れましたが、MERLOT内で自動翻訳機能が働くので、日本語でのコンテンツで十分です。


アメリカで作られるHyperCardのスタックは英語のものがほとんどだったように思いますが、英語を母語とするアメリカ国民の割合が50%となった今ではMERLOTの使用言語もグローバル化しているわけですね。ということは、日本語を学習するための教材だけでなく、日本語で学ぶいろいろな科目・分野の教材作りで貢献することがCIECには求められているということでしょうか。


まさにCIECに求められていることは、そのことです。高等教育のコンテンツだけなく、K-12のコンテンツも求められています。


最後に、プロジェクトを牽引されている武沢先生としては今後どのような展開を考えていらっしゃるのか、すでに何かご構想をお持ちなら聞かせていただけますか。


MERLOTが構築しているのはオープンエデュケーショナルリソース(Open Educational Resources)を活用したラーニングコミュニティです。世界中で日本語を学習したい人、日本語の文献が読みたい人、日本研究に携わっている人にとって、現地で居ながらにして無償で日本語による教育コンテンツにアクセスすることが可能になれば、素晴らしいことだと思います。さらにグローバル化した現在、わが国に在住するさまざまな外国籍の子どもたちの教育保障も改善することができます。 すべての人が等しく教育を受ける権利、オープンエデュケーションの理念だと思います。CIEC がこのMERLOTプロジェクトを通して少しでも貢献できればと思います。


日本でも様々な年齢の学習者、様々な言語を母語とする学習者に向けた成果が生まれてきそうで、楽しみですね。 本日はお忙しい中、大変有難うございました。


Special第9回は、2017年1月に「CIEC MERLOT ハンズオン・ワークショップ 第1回」が開催されたのを機に、「CIEC MERLOT プロジェクト」を推進されている武沢 護理事へのインタビューを掲載しました。ぜひご覧ください。

武沢 護:早稲田大学大学院・高等学院、CIEC 理事
(聴き手:CIEC 広報・ウェブ委員会)

Special第9回「CIEC MERLOT プロジェクトが目指すもの」