2017PCカンファレンス開催中の8月6日(日)、CIEC総会会場において「2017年度PCカンファレンス優秀論文賞」の表彰式が行われました。Special第13回では、表彰式にて賞状と副賞を授与された受賞者の皆さんの「喜びの声」をお伝えします。

2017PCカンファレンス最優秀論文賞

興治文子・高橋雄大・小林昭三 (新潟大学教育学部)
「タブレット端末を用いた星の日周運動における空間認識能力の育成」


写真右は井庭崇 2017PCカンファレンス実行委員長 (慶應義塾大学総合政策学部准教授)


興治文子(新潟大学教育学部准教授), 高橋雄大(新潟大学教育学部卒業生), 小林昭三(新潟大学名誉教授)

このたび、2017PCカンファレンス最優秀論文賞を賜りまして、ありがとうございました。大変驚きましたが、身に余る光栄と感じております。

天文分野は、多くの人が興味・関心を持っているにもかかわらず、理解が難しい分野です。授業におけるタブレット活用が一般的になる時代に向けて、本研究で明らかにした天文分野の概念形成の難しさやそれを覆す教授法の取り組みが少しでもどなたかの参考になると嬉しく思います。

また本研究に関わって、協力していただいた方々に心より感謝申し上げます。この受賞を契機に、これからも教育に貢献できるよう努力していきたいと考えております。

2017PCカンファレンス優秀論文賞

加藤良将・亀井美穂子・宮下十有・鳥居隆司 (椙山女学園大学)
「サウンドメディアを活用可能なインタラクティブ表現支援のためのプラットフォーム」


写真右は井庭崇 2017PCカンファレンス実行委員長 (慶應義塾大学総合政策学部准教授)


加藤良将(椙山女学園大学)

この度は、2017年度 優秀論文賞にご選出いただき誠にありがとうございます。大変嬉しく思っております。これも共に研究しご指導いただいている先生方のおかげだと心から感謝しております。昨年から行っている研究では、プログラミング学習が必修になることに合わせ、小・中学生やプログラミングの初学者でも容易に作品制作ができ、習熟度によって色々な表現ができるインタラクティブ・デバイスを作成してきました。今回は、特にサウンドメディアを用いることによって、自分の声を組み込んだ作品を作ることができるデバイスです。また、作品の中にそのまま入れられるように、あらかじめ色々なセンサを内蔵し、インタラクションを容易に創出でき、乾電池を使うことで単独でも動作するようにデザインしました。今回の受賞を励みとして、より一層モノづくりやプログラミングに興味を持ってもらえる仕組みづくりに取り組んでいきたいと思います。

2017PCカンファレンス学生論文賞

長澤直子 (立命館大学大学院 社会学研究科)
「大学生のスマートフォンとPCでの文字入力方法」


写真右は井庭崇 2017PCカンファレンス実行委員長 (慶應義塾大学総合政策学部准教授)


長澤直子(立命館大学大学院社会学研究科)

この度は、2017 PCカンファレンス学生論文賞をいただき、大変嬉しく思っております。このような賞が頂戴できるとは思いもよらず、本当に驚きました。

今回の研究は、私が院生として所属しております立命館大学の、BKC社系研究機構社会システム研究所より助成を受けた研究プロジェクトにおいて実施した、大学生の情報端末の使いこなしに関する調査が元になっています。プロジェクトのメンバーが関心を寄せているのは、PCを使うことが苦手になっている大学生です。「スマートフォンの方がPCのキーボードよりも文字入力がしやすい」という学生の声が聞こえてきたことで、それは本当なのか、もし本当だとしたらなぜそうなのかということを少しでも解明できればと考え、研究報告に応募しました。

選考していただいた先生方、そしてプロジェクトリーダーの木村修平先生をはじめとする関係者の皆様に、心より感謝申しあげます。

受賞者の皆さん、おめでとうございました!!


今回のSpecialでは、PCカンファレンス初の試みである「ラーニングスタジオ」の報告を掲載します。ラーニングスタジオは同時刻に、8つのテーマでパラレルに展開されました。ご自身が参加したスタジオはもちろん、他のラーニングスタジオについても“創造する学び”の一端をお楽しみください。

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高校生プロジェクトが誕生する生態系とは?

今村亮 (認定NPO法人カタリバ マネージングディレクター)


今村亮 (認定NPO法人カタリバ マネージングディレクター)

高校生が主役となるプロジェクトが注目を集めています。三重県多気町「高校生レストラン」や、福井県鯖江市「JK課」、宮崎県えびの市「飯野高校3年B組×曽我部恵一」など事例に事欠きません。従来より農業高校や商業高校など専門高校ではこうした取組が盛んでしたが、今では普通科での展開も広がっており、この流れに次期学習指導要領の検討が拍車をかけています。

ただしプロジェクトにおいて、高校生の参加が大人の「操り」や「お飾り」になってしまっては本末転倒です。プロジェクト学習をデザインする際には、その活動が本当に高校生の学びにつながっているか、指導者は注意深く点検する必要があります。

そこで、私のラーニングスタジオには高校時代にプロジェクトに取り組んだ二人の学生(すず・ななみ)をゲストに招きました。参加者二人の事例をインタビューしていただき、過去を辿りながら、「高校生プロジェクト」のあるべき理想像についてディスカッションしました。

一人目のすずが神奈川県川崎市で取り組んだのは、子ども支援プロジェクト「声でつなぐ」。放送部での活動を、部内に限定せず地域に飛び出して行おうというものでした。独りで始めたプロジェクトでしたが、勇気を出して部内の同級生を巻き込んだ結果、友人関係がより深まった様子が語られました。

二人目のななみが宮城県仙台市で取り組んだのは防災プロジェクト「イマココミライ」。宮城県内の被災格差を埋め合わせるための写真展やワークショップの活動です。学校から活動を認めてもらえず、先生との衝突に苦しんだ体験が語られました。

二人の体験談から導き出されたのは、「高校生プロジェクト」の意義とは何か、という問でした。プロジェクト活動が社会に与えるインパクトと置くこともできますが、それ以上に注目すべきは本人にもたらす学びの深さでした。プロジェクトが成功しようがしまいが、行動すること自体が高校生たちを明らかに大きく成長させます。その成長と自立は、ロジャー・ハートの「参画のはしご」モデルを参考にすることでわかりやすく確かめることができます。

また、彼女たちには家庭・学校に続く第三のコミュニティがあったことも特徴的でした。それはななみにとっては海外留学であり、すずにとっては地元自治体のプログラムでした。家庭・学校・第三のコミュニティ、それぞれが関連しながら成長を導く生態系のような関係性が形づくられていたと言えます。こうしたエッセンスを引き出していただいた参加者各位の熱心なインタビューに心から感謝を申し上げます。

結論として2点まとめます。一点目は、ともすれば「高校生プロジェクト」が時代のブームの中で粗悪なインフレへと流れてしまうことの懸念です。自主的なプロジェクト活動を強制してしまうことは全く無意味です。二点目は、だからこそ私たちNPOカタリバは「高校生プロジェクト」のあるべき姿を問う場所として、全国高校生マイプロジェクトアワードを運営していくのだという決意の再確認です。

今年も300~400プロジェクトのエントリーを目指して生態系を拡げているところですので、よろしければWEBサイトをご覧いただければ幸いです。

全国高校生マイプロジェクト

https://myprojects.jp/


2017PCCラーニングスタジオ「高校生プロジェクトが誕生する生態系とは?」(今村亮 認定NPO法人カタリバ マネージングディレクター)

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今回のSpecialでは、PCカンファレンス初の試みである「ラーニングスタジオ」の報告を掲載します。ラーニングスタジオは同時刻に、8つのテーマでパラレルに展開されました。ご自身が参加したスタジオはもちろん、他のラーニングスタジオについても“創造する学び”の一端をお楽しみください。

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企業をしらべれば人生が変わる

西野嘉之 (産業能率大学客員教授,ユーレット株式会社代表取締役CEO)


2017PCCラーニングスタジオ「企業をしらべれば人生が変わる」(西野嘉之 産業能率大学客員教授,ユーレット株式会社代表取締役CEO)

「企業をしらべれば人生が変わる」と題して、有価証券報告書などの企業情報をまとめたユーレットをご紹介し、スマホやPCで一緒に見ながら情報の順位と配置の重要性を体験して頂きました。


さらに、トヨタ自動車を分析し、250文字で概要「自動車業界の現状から、トヨタ自動車の課題と、将来について考察してください。」をまとめることを冒頭と最後に行い、企業を調べるポイントとそのプロセスを理解することで、どれだけ自分の概要が明確になるかを体験して頂きました。

ポイントは3つありました。第一に、第三者にわかりやすい文章構成で書く事を目指すということです。ある一つの論文の概要を例とし、「背景」「課題」「提案」「その効果」という構成で考えることの重要性を説明しました。これは大学のレポートや論文、あるいは社会に出てからも、シンプルに短く書くことの重要性とその難しさを、ご自身が冒頭で書いた文章と比較することで、セルフチェックをして頂きました。

第二に、結論から考え、どのくらい先の未来を結論とするのかが重要であることを示しました。結論として、そもそも4つのタイヤがついている車を想定するのか、あるいは空飛ぶ車まで想定して概要を書くのとでは、解決すべき「課題」が変わってくるからです。

第三に同業他社や、異業種の有価証券報告書の「対処すべき課題」を人間が比較する方法と、人工知能によって4000社を比較する方法をご紹介し、人口知能が人間に置き換わるのではなく、将棋の棋譜のように人工知能にデータを与えれば、人間が想像しきれない値を出し、人間が解釈することで新たな発見があることを体験して頂きました。

最後に、もう一度トヨタ自動車の概要を250文字で書いて頂き、2時間前にご自身で書いた概要と比較して、どの程度改善されたのかを考察して頂きました。さらに、一例として私の回答をご紹介して、ご自身が書かれた概要と比較して評価して頂きました。

終了後にアンケートを記入して頂きました。その結果、ほとんどの方に「非常に満足」で量も「丁度」良かったとご回答頂きました。時間に限りがありますが、もう少しPC環境の良いところでさらに手を動かしながら出来るとさらに効果が出ると感じました。

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今回のSpecialでは、PCカンファレンス初の試みである「ラーニングスタジオ」の報告を掲載します。ラーニングスタジオは同時刻に、8つのテーマでパラレルに展開されました。ご自身が参加したスタジオはもちろん、他のラーニングスタジオについても“創造する学び”の一端をお楽しみください。

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鑑賞ガイドをつくる

石川初 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)


石川初 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)

本ワークショップの課題として、以下のテキストを掲げた。

このワークショップの課題は「鑑賞ガイドをつくる」です。街で私たちの周囲にありふれている,あるいは容易に見出すことができるにも関わらず,従来は愛でる対象ではなかった風景や事象,または事物を選び,それらを「鑑賞」するためのガイドを制作します。絵や写真を使い,対象物の魅力が力説された,それを手にするとそれ以降は二度と以前のようには見えず,それを楽しく「鑑賞」してしまう,そのような視線の更新を起こすガイドの制作を目指します。今回は,これまで大学の演習などで作ってきた学生の作品のなかからいくつかの優れた事例を紹介したのち,短いレクチャーを行い,その後参加者に手を動かしてもらい,鑑賞ガイドを作成,最後にそれを発表してもらいます。

デザインやものづくりなど、何らかのものに関わる創造的な発想ができるための基礎的資質は、いかに先入観を排して物事を眺めることができるか、ということである。これに気づくための体験型・創作型の教育ツールとして、鑑賞ガイドづくりは有効である。鑑賞ガイドは、単に物事を収集して羅列・分類する「図鑑」ではない。よい鑑賞ガイドは私たちを取り巻く世界のある部分を切り取って、それに意味を与え、風景として眺めることを促す「視座」をもたらす。つまり、鑑賞ガイドは現実世界に対してすぐれて批評的な表現である。

ワークショップでは、まずこれまで筆者が同様の趣旨で実施した演習や授業の事例や、それらを履修した学生の優秀作品を紹介し、その後、教室を出てキャンパスを歩きながら各自でガイドの対象物を発見するフィールドワークを行い、その後教室に再集合して、撮影した写真を印刷し、A4用紙に貼り付けてそれぞれ独自の「ガイド」を製作、お互いに発表と講評を行った。

フィールドワークの前に、以下の「手法」を紹介した。

・愚直法: 「丸いもの」などのテーマやルールを決め、時間いっぱい、ひたすらに目についた「丸いもの」の写真を撮り続け、それらをずらっと並べてみて、そこから何かを見出す。

・執拗法: 目を引いたものや関心を抱いたものを、普段とは違う高さや距離で撮影し、その写真とじっくり向き合いながら読み替えたり見立てたりして、執拗な解説を加える。


参加者はみな積極的で、みな趣旨を早々に理解していた。最後には、赤いものの写真をひたすら取り続けて並べてみて、赤いものは「危険を知らせるサイン」と「それ以外」に分けられる、という発見や、木の樹皮の接写に「ドラム缶」「渓谷」などと名付けたものなど、独創的でユーモアのある「ガイド」が並んだ。


2017PCCラーニングスタジオ「鑑賞ガイドをつくる」(石川初 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)

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