開催趣旨

CIEC国際活動委員会では、2017年3月末に「韓国情報教育視察」を行いました。これには同委員会メンバーを含む希望者10人が参加し、KERIS(韓国教育学術情報院)、五星中学校、高麗大学などを訪問しました。また、今夏のPCC2017に於いては、同委員会は小中高部会と共同で、この韓国視察に絡めた内容のセミナーを企画しています。
 今回の研究会は、PCC2017のセミナーのプレ企画としての位づけを持つもので、高麗大学の金子美准教授に講演していただきます。研究会では、高麗大学の李元揆教授に通訳および情報提供のご協力をいただく予定です。
 日韓での「学校における情報教育環境」、「情報系の教員養成」、「コンピュータプログラミング教育と教員養成」など幅広い視点での講演と議論がなされること期待しています。なお、本研究会は国際活動委員会と北海道支部との共催企画です。

対象・人数

参加対象:小学校、中学校、高等学校、大学 教員、研究者、関連企業
参加人数:約20名


写真左:古賀委員、写真右:TERADA.LENON宮崎氏


※ Special第11回は、TERADA.LENONインタビューを2号(上・下)に分けてお送りします。今回はその「下」です。


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キャリアとしてのコンピュータ利用教育業界


さて、最後に3点目の(宮崎さんの)キャリアについてお話をおうかがいしたいと思います。まず、どういう経緯で社員数名のベンチャー企業に新卒で入社することになったのでしょうか?


私が在学中に、うちの社長が産能大に弊社のシステムを導入する仕事にかかわっていて、当時の学部長と色々とシステムのことで相談する機会もあったことから就職先として紹介されたのがきっかけです。当時は社員2名しかおらず、私が入社した数か月前に親会社から独立したばかりの会社でした。


入ろうと思った決め手は?


これから発展していく会社かなと思ったことと、「こうやりたい」「ここが問題ですよね」といった自分の意見を理解してくれて会社の経営に反映できる会社だったことですね。これは小さな会社でしかできない事だと思います。


ベンチャー企業に就職することに対して親御さんからは何か言われましたか?


いや、うちの親は自分の進みたい方向に行けという人だったので、特に言われませんでした。それに私が就職活動をしていた頃はちょうど氷河期だったので、なかなか決まらなくて、内定が取れればそこにいくという感じだったですね。


今は何年目?


8年目です。


宮崎さんが入社したことで、会社が急成長したって聞いていますが


いえいえ、そんなは事ないです(笑)


宮崎さんの何が会社を変えたのかな?


2人だけだとなかなかフットワークを発揮できなかったのですが、私が入社したことでそれができるようになった事が大きかったと思います。それと私が大学時代に勉強していたネットワーク技術を製品の改善に役立てることができた点も大きかったと思います。


インタビューを受けるTERADA.LENON宮崎拓也氏


今後の展望


会社あるいは個人として取り組んでみたい領域はありますか?


我々の製品(クリッカー)は、出席を取ったり、テストをしたりして、日頃から膨大なデータが自動的に蓄積されます。そうしたさりげない情報を分析することで、一人ひとりの動向や学習履歴が閲覧できるような仕組みを作ってみたいですね。


ビッグデータですね。


さらに、そうしたデータを単に大学教育の中に留めるのでなく、社会人になってからも継続して活用できるようにして、人材の登用や育成のためのデータとして活用できるようなポートフォリオを構築してみたいですね。


大学単体でポートフォリオを考えるのでなく、学校~社会をシームレスでつなぐようなポートフォリオということですか?


はい。実現に向けては個人情報保護など乗り越えなければならない障壁は大きいです。ですが今まで誰もやっていないことをいかに取り組むかが、こういう企業(ベンチャー企業)ならではかもしれないです。小さい会社だとなかなか開発費も出ないので、いつかどこかと組んでそういうのをやれたらいいなあと思っています。


先ほどの質問と重複しますが、CIECに対する期待や要望はありますか?


企業展示ブースがちょっと目立たないところにあったりするので、もう少し展示場所とか考えて欲しいなあと思うことはあります。それから分科会で、同じ時間に聞きたい発表が被ってしまって見ることができない場合もあるので、ビデオに収録して後から視聴できるようにしてもらえると嬉しいですね。


最近の学生さんに一言。


やりたい事とやれる事の違いをわかってほしいです。学生の狭い視野で発見できる「やりたい事」ってごくわずかなんですよね。視野を広く持ってほしいです。それと趣味と仕事は一緒にしない方がいいですね。一緒にすると休みの日の趣味がなくなってしまいますから(笑)。

インタビュー後記


広報・ウェブ委員会 古賀暁彦

残念ながらインタビューワーに在学中の宮崎氏の記憶は全くなく、学生時代の彼と今の彼を比較することはできない。しかし、わずか8年の社会人経験でこれだけ立派に成長するというのは、ベンチャー企業での仕事経験によるところが大きいのではないかと感じた。
また、単にクリッカーを販売しているのでなく、販売した後の地道なフォロー活動によって顧客の課題解決に貢献している点が、今のTERADA.LENONの好業績を支えているのだと実感した。

2号に分けてお送りしてきたSpecial第11回「クリッカー専門のベンチャー企業TERADA.LENONインタビュー」は以上です。次回のSpecial記事にもご期待ください!


インタビューを受けるTERADA.LENON宮崎拓也氏


CIEC団体会員でもある株式会社TERADA.LENONは、クリッカー(注1)を専門に扱うベンチャー企業である。クリッカーは大きく「設置型」「ハンディ端末型」「スマートフォン利用型」の3つに分類される(注2)。このうち同社が取り扱っているのは、「設置型」と「ハンディ端末型」である。これら2つのタイプは「スマートフォン利用型」に較べて割高であるというデメリットがある。しかしTERADA.LENON社は着実に業績を伸ばしている。今回のインタビューでは、その躍進の背景について同社営業部の宮崎拓也氏にお聞きした。また、宮崎氏はインタビュアーの大学(産業能率大学)の卒業生でもあるため、ICTを活用した教育ビジネスを就職先として選択した経緯や、ITベンチャー企業という外の視点から見た大学教育の現状とその課題についても話をうかがってきた。
(インタビュアー:CIEC広報・ウェブ委員会 古賀暁彦)

(注1)クリッカー:クリッカーとは、授業の最中教員の提示する選択式問題等に対し、学生がテンキー付きの端末等を経由して解答を送信するシステムの総称である。大学教育においては数年前より徐々に導入されるようになっており、大教室等での一方的な講義を双方向型の授業に変えるツールとして期待が高まっている。


設置型ステッカー

(注2)クリッカーの3類型:「設置型」は、ICカード読み取り機と選択肢ボタンが一体になった端末(右の写真)を学生の机に一台ずつ設置し、その上にICカード機能がついた学生証を置いて用いる。「ハンディ型」は、10キーパッドのついた無線端末を利用する。「スマートフォン利用型」はハンディ端末の代わりに、学生が個人で所有するスマートフォンを利用するタイプである。


※ Special第11回は、TERADA.LENONインタビューを2号(上・下)に分けてお送りします。今回はその「上」です。


TERADA.LENONってどんな会社?


お忙しい中時間をいただきましてありがとうございます。今日は大きく3つのことについてお話を聞かせていただきたいと思っております。1点目はICTを活用した教育ビジネスを行っているTERADA.LENONさんの事業について。2点目はそういった企業で働いている方から見た大学教育のあり方や学会あり方について。そして3点目は宮﨑さんのキャリア、つまり新卒でベンチャー企業に就職して働くということについてとなります。よろしくお願いいたします。


こちらこそよろしくお願いします。


まずTERADA.LENONさんの事業内容や、今までの経緯等について教えていただけますか?


元々は寺田電機製作所という会社の一事業部でした。平成21年(2009年)に、ICカードと連携したクリッカー(設置型)を扱う会社として独立しました。現在はハンディ端末型も取り扱い、販売するだけでなく、システムのカスタマイズや機材のメンテナンス等も行っています。


クリッカー専業の会社ってなかなかないと思うのですが・・・


専業(の会社)はないと思います。扱っている企業で3社ぐらいですが、それらも別の主力事業をお持ちで、クリッカーをメインで扱っているわけではないようです。


主なクライアントは?


四年制大学、特に医療系の大学(学部)が中心です。それらの大学では国家試験があるので、試験に向けての授業を実践する上でクリッカーをご活用いただいております。


というと?


講義の時間の中で学生の一人ひとりの理解度を把握できることが、クリッカー活用の最大のメリットとなっているようです。講義の中で理解しそれを復習する、さらに次の授業につなげる、こうしたサイクルを確立する上でクリッカーが重要な役割を果たしています。


ところで、ベンチャー企業で社員数も少ない中、クライアントはどうやって開拓していったのでしょうか?


最初に導入していただいた医科系の大学の先生が、学会等でクリッカーを活用した授業実践を発表いただいたり、他大学の先生をクリッカーを用いたご自身の授業の参観に招いたりしていただいたことで、横に広がっていったのが一番大きかったです。


その学会というのはCIECではないですよね(笑)


はい、残念ながら(笑)。 確か医学教育学会だったと思います。それと私情協(私立大学情報教育協会)、それから最近では歯科の学会でも弊社の製品を活用した教育実践についてご発表いただいております。


そういった口コミというか紹介を通じて販路が広がっていったということは、あまり競合とのコンペとか価格競争はない感じですか?


いや、あります(笑) ICカードを用いた「設置型」の端末というのは弊社でしか取り扱っていないのですが、ハンディ型とは価格差が大きいので競合します。 私たちは設備導入を前提として営業しているのですが、「ハンディ型」のクリッカーですと先生方の研究費で購入できる金額なので3~4倍の価格差が出てしまいます。そうするとコンセプトの違いを通り越して、安いものに先生方の目が行ってしまうことがあります。


なるほど、最近ではスマートフォンを利用したクリッカーの中には無料で使えるものまで出てきていますからねえ。


そうなんです。あれをやられると我々としても厳しい。


そんな厳しい中、「設置型」のクリッカーの価値や効用を、どうお客様に説明しているのでしょうか?


ICカードの学生証を使うことで、一人ひとりどこに着席しているかが把握でき、誰がどんな解答をしているかを個別に管理できる点をアピールしています。教室トータルとして平均どのぐらいの学生が解答できたかでなく、個々の学生がどれだけ理解しているかを把握できる点が最大の売りですね。特に国家試験合格を目指すような分野では、「個の理解度の把握」は重要なポイントのようです。


ICカード連携型クリッカー(講師画面)


他にはありますか?


設置型は名前の通り机に端末が固定されているので、紛失や盗難の心配がいりません。ハンディ型の端末を導入された大学さんの場合、この端末の管理がかなり大変で、職員の方の運用のストレスが相当高いそうです。


それありますよね。特に国の補助金等で購入したりすると、一台でも無くすとまずいからって、逆に管理が厳しくなって使わなくなってしまったりって、本末転倒ですよねえ。


先生一人の講義に、事務方の人が毎回お付き合いして、クリッカー配布して、回収して、数を数えて、きちんとしまって・・・この労力を考えるとハンディ型の導入を躊躇されるケースが多いようです。


話がちょっと飛んでしまうのですが、設置型のクリッカーを使う上で必要となる学生証のICカード化は進んでいるのですか?


はい、かなり進んでいます。しかしIC化する目的が明確でないままに導入してしまう大学さんも少なくないですよ。


というと?


流れがそうなっているからという理由だけで導入して、結局学食の支払いとか、証明書の発行とか図書館の入館ぐらいにしか活用されていないケースが多いんですよ。


とすると、ICカードタイプの学生証の有効活用といった切り口で、設置型のクリッカーシステムを導入するという線もあり?


あっ、ありです(笑)。 それから、このシステムを導入する時に学生証のICカード化を実施する大学さんもありますよ。


株式会社TERADA.LENONのクリッカー導入事例


企業から見た大学教育・学会


つづいて、2点目の「企業で働いている方から見た大学教育のあり方や学会のあり方」についておうかがいしたいと思います。企業の人から(お客さんとしての)大学を見たときに、率直にどんな印象を持っていますか?外からみて「こういうところが課題じゃないの、なんとかしないといけないのでは」と思うところとかありませんか?


一番疑問に思うのは、「大学教育って何だろう」ということです。一人の先生の教育のことを言うのか、それとも学部全体の教育のことを言うのか。そのあたりがどうも明確になっていない気がします。 それと、大学教育は社会に出るためのステップである筈なのに、それがうまく機能していない。もっと考え方や立ち居振る舞いのことを教えるべきではないかと思います。 熱心な先生とそうでない先生との差が激しいのも問題だと思います。教育内容や教育方法を何年も変えていない先生が本当に学生のためになっているのか疑問に思います。


我々がCIECも含め教育系の学会でお会いする他大学の先生は、おそらくその学校の中でも最も熱心に教育をやられている先生だと思うので、そういった方々ばかりをみていると、世の中の大学の先生の「平均像」が見えてきません。そのあたりの「平均」というのは日々営業で色々な大学を回っている宮﨑さんにはどう映っていますか?


我々にもよく見えません(笑)。でも、一部の大学で教育方法の全体的な底上げに向けた取り組みが始まっていますね。


例えば?


授業の収録システムを活用して、教員の授業を相互評価するような仕組みを導入している大学がありますね。授業参観だと、そこに来ている先生をつい意識してしまうのですが、この仕組みだと参観者を意識することなく普段の授業を実施し、それを評価することができます。


他には?


講義の中で出題する問題の良しあし(言葉遣いや選択肢)を、委員会を作って検討しブラッシュアップしている大学もあります。通常、どの先生がどんなスライドを使って講義しているか他の先生は知りませんよね。それをみんなで検討することで改善している例があります。


そういった授業収録システムをTERADA.LENONで扱っているわけではないですよね?


はい。でもそういった他大学での授業改善の取り組み事例を知っている事が、営業上の武器になっています。また、そうした情報をもとに、異なる大学の先生と先生をつなげる「コーディネート役」を担ったりもします。


逆に、ここの大学うまくいってないなあと思う例はありますか?


学部長や学長が皆の意見を汲み取らないで独断でシステムを導入し、うまくいかないケースですね。あまり授業を担当していない学部長や学長より、普段学生と接している教員の意見をシステム導入に反映することが大事だと思います。


あ~耳の痛い話です(笑)。


目的のはっきりしない導入、例えば補助金申請ありきで設備を導入するようなケースはうまくいかないですね。納品した後、倉庫にしまったままのクリッカーとか。


民間企業からのCIECへの期待は何かありますか?


大学の先生とコラボレーションした企画とかやりたいですね。その中で、色々な大学の先生の意見をお聞きしたいです。


来年のPCカンファレンスではぜひ一緒にイブニングセッションを企画しましょう(笑)


ぜひぜひ


ところで色々な大学の先生の意見というのは、今までの製品開発の中でもかなり取り入れてきたのですか?


弊社の製品は、売りっぱなしでなく、メンテナンスの契約をいただき、使う中で製品への課題や要望をいただき、改善(ケア)を継続しています。


実際に使ってみると、導入の際に抱いていたイメージとギャップがある場合が多いですからねえ。それは重要ですね。

この続きは「クリッカー専門のベンチャー企業TERADA.LENONインタビュー(下)」をご覧ください。


テーマ:Swift言語によるプログラミング - Swift Playgroundsを用いた教材作成 (基礎と応用)
会場名:大学生協杉並会館2階204・205会議室
対 象:CIEC会員および非会員(大学・小中高教員)
定 員:初級者向け30名、中・上級者向け20名
   *初級者向けと中・上級者向けに分かれて同時実施 (参加申し込み時にいずれか1つを選択)
  **中・上級者向けの内容は初級編「コードを学ぼう1」を学習済みであることが前提です
参加費:無料

【体験学習用端末の条件】 
(1) ハードウェア Wi-Fi接続可能なiPad
(2) ソフトウェア iOS 10 + Swift Playgroundsアプリ
(事前インストールが必要)
(備考)当日持参できない参加者の方には主催者よりiPadを一定台数(10台程度)貸し出します。

【開催趣旨】
 2020年度から実施される予定の新学習指導要領では、プログラミング教育の必修化が明記されており、「プログラミング的思考」を様々な教科学習の場面で導入するための具体的な指針が示されています。一方、ICT活用教育の現場においては、新たな教材コンテンツの必要性が高まっており、教員側にとっても、汎用性の高いプログラミング言語を学習することは、各自の目的に合った教材を作成する上で重要であるといえます。
 今回の学習会では、前回に引き続き、Swift言語によるプログラミングの基礎を学ぶことを目的として、Apple社が教育機関向けに無料公開している学習アプリSwift Playgroundsを実際に体験学習していただきます。また、同時に実施する中・上級者向けワークショップでは、同アプリを利用した簡単なゲーム感覚教材作成の基礎についても具体的なデモを提示しながら説明します。

*下記の学習会プログラムは講師・会場の都合等によって一部変更になることがあります。あらかじめご了承ください。
**本学習会専用のFacebookイベントページを立ち上げましたので、こちらも是非ご覧ください。(学習会当日、下記イベントページ上で中・上級者向けワークショップの模様をライブ中継いたします)
     CIEC外国語教育研究部会第11回学習会Facebookイベントページ