開催趣旨

インターネットとコンピュータが学校だけでなく家庭でも急激に普及してきています。今まで学校内だけで教育を行ってきましたが、地域や社会とのかかわりがインターネットの普及により急速に広まってきています。今回の研究会では、山本恒先生に園田学園女子大で行っているインターネットキャンパスについてご講演いただきます。また、井上明先生には甲南大学での情報リテラシー教育用の e-learning 教材開発と運用および幼児向けの情報教育教材開発と実践についてご講演いただきます。

園田学園女子大学では、インターネット技術を利用した学習支援システムを使って、大学の専門の授業が受けられる「インターネット・キャンパス」を2000年4月1日より運営され、電子的な仮想キャンパスに受講生と教員が寄り合い、インターネットの教材をもとに教員や受講生同士が対話や会話をしながら学習を進めていくというシステムを開発されました。このシステムを運営されて今年で4年目ですので、具体的なお話が聞けることと思います。

甲南大学では、情報教育研究センターが1996年より発足し、リテラシー教育のほかに電子教材の授受やレポート提出などの教学支援を始められています。ここで、情報リテラシー教育用の e-learning 教材や幼児向けの情報教育教材を開発し実際に運用された経験をお話いただきます。講演をお聞きして、今後の CIEC の活動の可能性を広げてゆきたいと思っています。

プログラム(敬称略)

司会 大岩幸太郎 (大分大学)
13:30 - 13:40 開会挨拶 綾 皓二郎(石巻専修大学)
13:40 - 14:40 講演「情報リテラシーの学びの場」 井上 明 (甲南大学)
14:40 - 14:50 休憩
14:50 - 15:50 講演「インターネットキャンパス」 山本 恒 (園田学園女子大学)
15:50 - 16:00 休憩
16:00 - 16:50 討論と意見交換
16:50 - 17:00 閉会挨拶

参加費

CIEC 会員および大学生協組合員は無料、その他の方は500円となっています (どなたでもご参加いただけます)。


* 2003年度以降の研究会については、CIEC 研究会一覧をご覧ください。

2002年度

第13回研究会

テーマ ケータイと学校教育 part2 ~ケータイから読み解く現代の学校教育~
日時 2002年12月14日 13:30-17:30
場所 大学生協会館 202・203会議室

第12回研究会

テーマ ケータイと学校教育 ~モバイルツールの可能性~
日時 2002年10月26日 13:30-17:30
場所 大学生協会館2階会議室

第11回研究会

テーマ 図書館というメディア ~情報教育と図書館とのかかわり~
日時 2002年6月8日 13:30-17:30
場所 大学生協会館2階会議室

2001年度

第10回研究会

テーマ 「新教科「情報」実施に向けて ~実習は大丈夫?~
日時 2002年2月23日 13:30-17:40
場所 大学生協会館2階会議室

第9回研究会

テーマ 最新の教育コンテンツの動向 part2 ~企業での取り組み~
日時 2001年12月8日 13:30-17:00
場所 大学生協会館2階会議室

第8回研究会

テーマ 最新の教育コンテンツの動向 ~メーカー等の開発状況~
日時 2001年10月13日 13:30-17:00
場所 大学生協会館2階会議室

2000年度

第7回研究会

テーマ 「総合的な学習」第1回研究会
日時 2000年12月9日 14:00-17:30
場所 大学生協会館2階会議室

第6回研究会

テーマ 松岡正剛氏、いま「情報」を問い直す ~教育の場面での「知の編集術」~
日時 2000年10月21日 14:30-17:30
場所 大学生協会館2階会議室

第5回研究会

テーマ 総合的な学習の時間における学校交流とコンピュータ利用
日時 2000年10月14日 14:00-17:00
場所 コープイン京都2階会議室

第4回研究会

テーマ 「小中高等学校での新しい学びの創造」を支える学校像 ~教科「情報」試行の中での教科書と教育現場の実際~
日時 2000年6月3日 14:00-18:40
場所 早稲田大学高等学院会議室

1999年度

第3回研究会

テーマ 「小中高等学校での新しい学びの創造」を支える学校像 ~遠隔教育を支える新しいテクノロジー~
日時 2000年3月11日 13:00-17:00
場所 北海道大学 高等教育開発研究部1F談話室
大学生協会館2階会議室
ピクチャーテル(株) 本社 (港区白金台)
大阪府立大学 総合情報センター

第2回研究会

テーマ 「小中高等学校での新しい学びの創造」を支える学校像 ~学校と地域の壁を越えて~
日時 1999年12月11日 13:30-17:00
場所 大学生協会館2階会議室

第1回研究会


2003年度

第38回研究会

テーマ 「プログラミング教育を見直す」- 高等学校と大学との連携を視野にいれて -
日時 2003年10月18日 (土) 13:30 - 17:00
場所 大学生協会館
報告 第38回研究会報告書 (PDF 形式, 31KB)

第37回研究会

テーマ 大学における情報リテラシー教育の取り組みと実際
日時 2003年6月28日 (土) 13:30 - 17:30
場所 セシオン杉並

第36回研究会

テーマ 大学における一般情報教育の過去・現在・未来
日時 2003年6月21日 (土) 13:30 - 17:30
場所 東北大学 川内北キャンパス

第35回研究会

テーマ どうする!『情報』の評価
日時 2003年5月17日 (土) 13:30 - 17:00
場所 セシオン杉並

2002年度

第34回研究会

テーマ 外国語教育とコンピュータ
日時 2003年3月29日 (土) 13:30 - 17:00
場所 立命館大学びわこくさつキャンパス (滋賀県草津市野路東1-1-1)

第33回研究会

テーマ コンピュータの利用は脳の働きにどのような影響を与えているか
~発達と教育および脳科学の立場から~
日時 2002年10月12日 (土) 13:30 - 17:30
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第32回研究会

テーマ インターネットによる遠隔講義
~未来志向への魅力と課題~
日時 2002年6月22日 (土) 13:00 - 15:40
場所 早稲田大学 10号館

第31回研究会

テーマ 最新 OS の到達点 (MacOS X & WindowsXP)
~教育での活用~
日時 2002年3月9日 (土) 13:30 - 17:30
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

2001年度

第30回研究会

テーマ メディアリテラシーの現状と課題
~教育現場から~
日時 2001年11月17日 (土) 14:00 - 17:15
場所 早稲田大学 西早稲田キャンパス 7号館

第29回研究会

テーマ 人に優しい IT 社会の実現と教育の役割
日時 2001年6月23日 (土) 13:30 - 17:30
場所 金沢大学 角間キャンパス 教育実践総合センター

第28回研究会

テーマ ネットワーク社会における著作権法
日時 2001年5月26日 (土) 13:00 - 17:00
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第27回研究会

テーマ ミレニアムプロジェクトに向けて
~教育の情報化を探る~
日時 2001年3月10日 (土) 13:00 - 17:00
場所 大学生協杉並会館、北海道大学 電子情報エレクトロニクス新ビル、金沢大学 角間キャンパス 教育実践センター、大学生協 大阪事業連合新大阪事務所

第26回研究会

テーマ 理系学部におけるコンピュータ利用教育および情報教育の現状と課題
大学改革は「情報教育」をどのように変えたかシリーズ4
~コンピュータ利用教育の10年を振り返って~
日時 2001年1月27日 (土) 13:30 - 17:00
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

2000年度

第25回研究会

テーマ ミレニアムプロジェクト『教育の情報化』を考える~Part2~
文部省 岡本 薫課長を迎えて
日時 2000年12月16日 (土) 14:00 - 17:30
場所 大学生協杉並会館 5階ダイニングルーム

第24回研究会

テーマ プレ PC カンファレンス
日時 2000年11月25日 (土) 12:30 - 15:30
場所 金沢大学 角間キャンパス 教育実践センター

第23回研究会

テーマ 「ミレニアム・プロジェクト『教育の情報化』」を考える
日時 2000年10月28日 (土) 13:30 - 17:00
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第22回研究会

テーマ プレ PC カンファレンス
コンピュータ利用による学校と社会の新たな結びつき
日時 2000年6月17日 (土) 13:30 - 17:00
場所 北大 電子情報エレクトロニクス新ビル 2階

第21回研究会

テーマ 双方向学習 (Interactive Learning)
~学びの Community への「参画」からみたコンピュータ利用教育とは~
日時 2000年4月22日 (土) 13:30 - 16:30
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第20回研究会

テーマ 大学改革は「情報教育」をどのように変えたか シリーズ3
~コンピュータ利用教育の10 年を振り返って (語学教育編) ~
日時 2000年2月26日 (土) 13:30 ~17:30
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第19回研究会

テーマ CIEC 会誌『コンピュータ & エデュケーション』読者会
日時 2000年1月8日 (土) 13:30 - 17:00
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

1999年度

第18回研究会

日時 1999年12月4日 (土) 12:30 - 15:40
場所 北海道クリスチャンセンター

第17回研究会

テーマ 大学改革は「情報教育」をどのように変えたか シリーズ2
~コンピュータ利用教育の 10 年を振り返って (私立大学編)~
日時 1999年11月27日 (土) 13:30 - 17:30
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第16回研究会

テーマ 双方向学習 (Interactive Learning) のためのコンピュータ利用
~この道具、教育にどうつかいますか?~
日時 1999年11月20日 (土) 13:30 - 17:30
場所 (株) アスキー

第15回研究会

テーマ 大学改革は「情報教育」をどのように変えたか シリーズ1
~大学教育とコンピュータの 10 年を振り返って~
日時 1999年10月2日 (土) 13:30 - 16:30
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第14回研究会

テーマ 教育ツールの可能性を探る
日時 1999年7月3日 (土) 13:00 - 17:00
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第13回研究会

テーマ コンピュータ・ネットワークの新しい可能性
~99PC カンファレンス "プレ" 企画シンポジウムテーマを掘り下げる~
日時 1999年6月12日 (土) 13:00 - 17:00
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第12回研究会

テーマ 小中高校の情報教育における 2000 年問題 その4
~教育科学の立場からの問題提起および現場からの報告~
日時 1999年5月29日 (土) 13:00 - 17:30
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第11回研究会

テーマ 情報教育の 2000 年問題 その3 PartII
日時 1999年4月3日 (土) 14:00 - 17:00
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第11回研究会

テーマ 高校情報教育における 2000 年問題 その3
~教育工学の立場からの問題提起と現状~
日時 1999年3月13日 (土) 13:30 - 17:00
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第10回研究会

テーマ 新しいテクノロジー
日時 1999年1月30日 (土) 13:00 - 17:00
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

1998年度

第9回研究会

テーマ 2003 年に向けた初等中等教育における情報教育と CIEC の役割
日時 1998年12月26日 (土) 13:00 - 16:30
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第8回研究会

テーマ 小中高における新しい学びと大学の連携
~情報教育の 2000 年問題に直面して~
日時 11月28日 (土) 13:00 - 17:00
場所 信州大学工学部 (長野キャンパス) 内 生協2階

第7回研究会

テーマ 情報教育の 2000 年問題
~教育の一貫性の中での高校における情報教育の現状と問題点および将来展望~
日時 1998年10月31日 (土) 14:00 - 17:40
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第6回研究会

テーマ 自然科学教育について考える
~会誌 vol.4 の特集との関連で~
日時 1998年5月23日 (土) 13:00 - 17:00
場所 コープイン京都 会議室

第5回研究会

日時 1998年5月30日 (土) 13:30 - 17:00
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第4回研究会

テーマ コンピュータ利用教育の新しい動向
日時 1998年3月28日 13:30 - 17:00
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

1997年度

第3回研究会

テーマ KIE プロジェクトの現状と今後
日時 1997年6月7日 (土) 14:00 - 17:30
場所 大学生協杉並会館 2階会議室

第2回研究会

テーマ 教育とコンピュータ
日時 1997年5月24日 (土) 10:00 - 13:00
場所 コープイン京都

第1回研究会


外国語教育研究部会第4回研究会

外国語教育研究部会第4回研究会は去る3月16日 (土) 午後1時30分から同5時まで、青山学院大学渋谷キャンパスで行われた。今回のテーマは「e-learning の動向と外国語教育」であった。前回の北九州に比べて東京開催という地の利があったせいか、あるいはテーマがより話題性に富むものであったせいか、開催通知を ML、ニューズレター等で出した直後から申し込みが相次いだ。最終的には、数名の欠席者があったものの、当日参加申し込みの方も含めて32名 (内訳は大学教員17名、他 (専門学校) 教員5名、企業他10名) の参加者があり、ほぼ予想通りの人数となった。

今回の研究会は、昨年同時期に開催した第2回研究会が好評であったこともあり、ワークショップ形式を中心とした実践的な内容の企画を検討した。講師については、研究会テーマに沿った製品を開発・提供している企業の技術または営業担当者から適任者を探し、NTT ラーニングシステムズ社 (http://info.nttls.co.jp/) インターネット事業部の高木成一氏をお招きすることにした。また、研究会会場として、一定台数の講習向け PC が利用できる教室を会場校側で当たっていただいた結果、情報教育向けの演習室をお借りすることができた。ただし、残念ながら、PC 端末の利用者権限の関係で、参加者全員が直接体験版のアプリケーションツールを操作しながら利用方法を学習する環境は実現できなかった。

研究会の冒頭で、会場を提供していただいた青学大の小張先生から自己紹介を兼ねて授業実践の口頭発表がなされた (詳細は報告末尾の発表要旨を参照) 。その後、講師の高木氏からまず最近の e-learning 関連のウェブサービスについて、様々な配信方法と適用分野での事例を引用した形での講演が PowerPoint を用いて行われた。特に、広帯域インターネットの普及に伴い、ウェブ上で閲覧できる学習内容が単なる HTML 文書やイメージ情報を主体とする「静的」コンテンツから講演ビデオ、視覚効果を巧みに利用したプレゼン資料など「動的」コンテンツに移行しつつあることが如実に示された。また、ライブ映像を利用した e-learning システムの新しい提案として「電網会議室」の紹介も行われたが、こちらは従来の CU-SeeMe や NetMeeting との相違点が、画質・音質の向上、通信の安定性、WAN (Wide Area Network) 環境への対応等を除いて際だったものがなく、ライブ授業で共有できるファイル形式も限られているなど、具体的な用途は未知数という印象であった。

以上の講演に引き続いて、ウェブ上で教員自身が動画・音声・文字情報を組み立て、教材として役立てるためのツールとして「SMIL Editor ver. 2.0」の紹介と、同ツールを実際に使ったデモンストレーションが高木氏によってなされた。このツールは、W3C (ウェブの国際標準規格を制定する公益団体) が HTML の限界を克服するための親規格として推奨している XML に準拠して策定された SMIL (スマイル) 言語を用い、素材の配置および時間同期スクリプトを自動生成するアプリケーションである。このツールの大きな特徴は、上記の SMIL 言語自身に関する知識を全く持たない初心者でも、ウィンドウ上のアイコン操作と一連のボタン、メニュー選択だけでマルチメディア型 e-learning 教材が作成できることである。今回の研究会では、上述の会場機器の利用制限と事前準備不足のため、参加された先生方にサンプル素材を使用して実際に簡単な教材を作成していただくことはできなかった。しかしながら、今後 SMIL Editor と同様の「直観的」な操作性を保ちながら、より強力な e-learning 教材作成を可能にするツールが出現するのではないかという期待を抱かせるには十分な内容であったように思われる。最後に、参加した先生方の反応として、外国語教育向けのオンライン教材作成には、今回紹介された SMIL Editor よりもさらに汎用性・拡張性の高いツール、例えば IBM HP Builder に匹敵するような操作性に優れた XML エディタが必要である、という意見があった。

(文責 上村 隆一)

(発表要旨)

「ITと世界観教育」

この発表では、「演習」と「英語とインターネット」のクラスで指導してきたことを報告する。コンピュータを使用し、情報を獲得、分析、統合することにより、知的枠組みを構築しながら、英語の表現力と世界観を養うものである。オックスフォード大学、イー博士の世界観モデルを学ぶことにより、物の見方、考え方を訓練し、自分自身の世界観をより具体化していく。インターネットで獲得した情報や、講義で学んだ世界観を整理しまとめ、PowerPoint で発表をし、それをホームページにリンクさせる。一連の学習活動を通して、知の枠組と体系を作っていくものである。

インターネット上の情報のほとんどは英語であり、今後ますます読み、書き、発信型の英語力が必要となろう。英語検定試験 (TOEIC、TOEFL、IELTS、英語検定、国連英検、その他) に高得点を取ることが社会からも要求されている。特に、英語の読解力、情報を入手するための英語力、作文力、英語で情報を処理、分析、統合する能力、英語で知的枠組みを再構築し、英語で情報を発信する能力、すなわち、各自がホームページを作成して、学習してまとめたものを Html 形式、PowerPoint 形式、PDF ファイル形式で保存し、リンク集を作成し、そこからいつでも必要な情報を引き出し、日英の言語で自由に発表できる能力が必要とされる。このような一連の学習過程と活動を通して、自ずと頭の中に、Thinking network process を構築していくのである。21世紀に生きる人類にとっては、総合的な英語力を養い、デジタル化した社会に強い人間になることが要求されている。

IT 革命後、現代社会はブロードバンドの時代に突入して、マルチメデイアネットワークやインターネットなどの情報通信技術を活用した教育が、日本における21世紀の高等教育のあり方を大きく変えようとしている。IT 革命の時代に対応したサイバーキャンパスの先端的な実践大学が増加している中で、サイバーキャンパス教育方法開発の一つとして、世界観教育における Virtual Reality の必要性がある。

いつでも、どこでも、情報を交換できるような、ユビキタスの時代には、双方向のコミュニケーションも必要である。インターネットとコンピュータの導入により、さらに幅の広い、多角的な言語活動が可能になる。世界の情報をインターネットからダウンロードすることにより、メデイアリッチな手段と方法を考え、学生のやる気を引き起こし、「自分で物を考え、調べ発表する訓練」をしていくには、コンピュータを利用し、Virtual な言語活動をしていくことが重要であろう。


外国語教育研究部会第3回研究会

7月21日午後1時30分より北九州市若松区の北九州学術研究都市学術情報センター内 CAI 室にて行われた。参加者は大学、高校から計15名と初めての地方開催としてはまずまずの規模となった。代表世話人からの挨拶、報告者の紹介に続いて、2人の先生から実践経験に基づく報告が行われ、活発な質疑応答がなされた。また、報告終了後、休憩を挟んで、代表世話人による「WWW 環境を利用したオンライン語学教材の作成」ワークショップが行われ、参加者は最後まで熱心に実習に取り組んでいた。報告内容の概要は下記の通りである。

安波誠祐先生 (熊本電波工業高等専門学校)

「イントラネットからインターネットへ -学習者の実態に応じたネットワークの活用-」

はじめに、熊本電波工業高等専門学校の学校紹介をされた。もともとは、電波高校で通信士の養成学校であったがその後高専になり、現在は、弱電関係 (情報通信工学科、電子工学科、電子制御工学科、情報工学科) を中心に教授しているとのこと。

次に、KNCT (1984~1996) のネットワーキングの歴史的変遷を述べられ、実践例として一般科目 CAI 室での英語授業と、専攻科の「コミュニケーション英語」をあげられた。

一般科目 CAI 室での英語授業は、CAI 室の学習環境が整備され、1996年に初心者対象に CAI 室を利用できるようになったのをきっかけにはじまった。電子メールができ、ホームページが作れる領域を確保したのと同時に、ネットワークに制限をかけて、外部に対しての保護をかける等の限定的なネットワーク環境を構築し、「イントラネットを活用した英語授業」を開講した。そして、その授業環境の利点と欠点について述べられた。

その成果を受けて、専攻科の「コミュニケーション英語」科目を2000年4月より行っておられる。少人数 (21名程度) で、受講者はリテラシーも高く、ネチケットも心得ている。英語教師の役割は、テクニカルなことではなく、英語 (コンテンツ) 面でのサポートをすることであるという。Web 上のリソースを利用して、学習者のレベルとニーズに応じたもので、動機付けを高めることを目的とし、学生は楽しんで授業を受けていたようである。ここでは、実用性のあるアプローチで「役に立つインターネットを活用した英語授業」を強調された。授業内容は大きく分けて2つあり、Free Web-based E-mail (英語版) を利用してのメール送受信と、ホームページ作成でありにあて、E-mail では、実際にメールでレポート提出 (昨年度は292件) をさせたとのこと。ホームページ作成については、HTML 入門を氏自らが作り、HP 上で公開された。コンテンツは自己紹介、プロジェクト、リンク集などを書くように指導し、その評価は、自己申告+相互評価+教官による形で行ったとのこと。その後、学生の作った HP を紹介され、最後に、教師側に学習の明確な目標があり、創意工夫さえすればインターネットは無限に活用できるというまとめをされた。

講演の後、質疑応答がなされた。コミュニケーション英語のコミュニケーションとは?という質問については、HP 作成により発信型コミュニケーションを高めていると答えられた。授業評価については、詳しいアンケート調査は行っていないので今後していかなければならない課題であろうとのこと。また、語学と専門教科との連携がなかなかとれないという現状については、フロアからも多数の意見交換がなされた。評価面においては、ネットワーク授業では評価が困難であるが、考慮し対応していく必要があろうということで結論された。

田中洋史先生 (福岡県立八幡中央高校)

まず、勤務校における CAI 導入までの経過をご紹介いただいた。県内でもコンピュータの設置は最も早い方で、1987年に教科実習の一部として導入。当初はグラフィック系のプログラムや既存のアプリケーションソフトを使った教育に用いていた。その後、英語教育の一環として、外国人補助教員 (ALT) の助けを借りて、外国の教育機関との e-mail 交換などを生徒に行わせた。しかしながら、大学進学のための受験教育優先という進学校の宿命があり、またコンピュータ利用教育の有用性については教員間でも異論があるため、なかなか積極的に英語学習に活用するところまでは至っていないのが実情とのこと。要するに、生徒への動機付けとして、かつて LL が果たした役割をコンピュータ (キーボード) が代替し、ALT (e-mail) へと生徒の興味の目先が変わってきただけという印象が強い。さらに、情報リテラシー教育に関しても、語学教育との連携は全く論外で、中途半端な実習内容のためか、生徒の利用能力を涵養するには至っていない。今後は、情報機器を利用する上でのモラル、エチケットに関する教育も必要ではないかと思われる、と報告された。

続いて、田中先生からの問題提起的な報告に対する質疑応答がなされた。はじめに、田中先生と同じく、進学校におけるコンピュータの教育利用について、教育現場ではあくまで「大学入試」に束縛されるため、英語学習において、コンピュータを利用することにより、4技能のどの部分が改善されるかについて客観的な裏付けがなければ理解を得られにくいとの意見が出された。また、一時的に短期間コンピュータを利用した英語授業を展開したとしても、生徒の語学力を伸展させることは不可能であり、情報機器の操作等のリテラシー教育についても、継続的なスキル養成が必要であるという意見も複数の参加者から述べられた。一方、コンピュータ利用が単なる英語学習への動機付けにすぎないとしても、従来の受験英語に偏倚した教育手法に比べれば有効な学習手段となりうるという意見もあり、教育現場にいわゆるコンピュータに精通した人間が一人でもいれば、カリキュラムを実践していくことは十分可能とする前向きな発言もあった。

(吉田晴世、上村隆一)